素行障害は、アメリカの精神医学会のマニュアル「DSM-5」において主に用いられている疾患名です。
WHOの定めるICD-10ではこれに対して「行為障害」という疾患名が用いられます。
名前は違いますが、診断基準や原因などにそれほど差は見られません。

ただ、ICD-10は反抗挑戦性障害を含めた4つの疾患を後遺障害の下位分類として定めています。
ここが、DSM-5と異なる部分です。

以下がICD-10の行為障害に含まれる下位分類の疾患です。

1.家庭限局性行為障害…家族が精神的に参ってしまうほど激しい家庭内暴力を伴う疾患です。この行動は家庭内に限定され、学校生活や友人間では問題が見られないのも特徴です。
ただ、家庭内暴力は統合失調症や強迫性障害、家族関係が悪化していることを引き金に起こる場合もあるので、見極めが肝心です。

2.個人行動型行為障害…後遺障害の症状を一人で行う疾患です。親しい友人がいないこと、グループに所属しないことが条件です。

3.集団行動型行為障害…行為障害の症状を満たしているが、人間関係に問題がなく友人がいることが特徴です。

4.反抗挑戦性障害…親や教師をはじめとする目上の人に拒絶的で反抗的な態度をとり、口論を仕掛けたり挑戦的な行動を起こす疾患です。

反抗挑戦性障害は『DSM-5』では独立した疾患として扱われていますが、『ICD-10』では行為障害に含まれます。

素行障害の合併症

素行障害の代表的な合併症としては、反抗挑戦性障害が挙げられます。
小児期発症型素行障害の子どもによく見られる合併症で、重度になるにつれて素行障害の症状も現れます。

反抗挑戦性障害は、親や教師をはじめとした目上の人に拒絶的で反抗的な態度をとって口論を仕掛けたり挑戦鉄器な行動を起こす疾患です。
合併する原因としては、自分よりも偉い人との間に挑戦的になって揉め事を起こすという共通の症状があることが挙げられます。

ただ、素行障害は反抗挑戦性障害に比べ、人や動物に対する攻撃的な行動や物の破壊、盗みや詐欺などの犯罪行為が見られることから、両者を混同してはなりません。

他にも、素行障害の代表的な合併症として「ADHD(注意欠陥・多動性障害)が見られます。
ADHDを持つ人は、二次障害の「人間不信的行動」として素行障害を発症してしまうことがあります。

ADHDとは不注意、多動性、衝動性が見られる発達障害のことで、年齢や発達に不釣り合いな行動をとることで社会的、学業的に支障をきたすことがあります。

人間的不信行動とは、自尊心や自己肯定感が低下することで自信を喪失してしまったり、被虐的な気持ちになることで他人を信じられなくなった時に起こす行動のことです。

ADHDを抱えている人は、自分でADHDであることを認識していない場合も多いため、周りから理解が得られていないことも多々あります。
このため、気づかないうちに人間不信になり、素行障害を発症してしまうことも珍しくありません。

この他、素行障害の合併症としてのリスクが高いものとして「うつ病」「双極性障害」「間欠爆発症」「適応障害」などがあります。
これは、怒りっぽい、気分の浮き沈みが激しいといった症状が一致しているためです。

DBDマーチ

ADHDに始まり「人間不信的行動」の二次障害として反抗挑戦性障害や素行障害、反社会的パーソナリティ障害に展開してしまうことがあります。
この流れは、破壊性行動障害(DBD)マーチと呼ばれる概念です。
ただ、このDBDマーチに関しては現在様々な議論がなされている最中で、まだ確立していない概念と言えます。