皆さんこんにちは!本日も発達障害等に関する学びや情報交換の場所なることを願って投稿させて頂きます。今日のトピックは「発達障害のオウム返し」についてです。
子どもが言葉を覚え始めた時に、オウム返しをするのを聞いたことはありますか?
発達障害で調べていくと、症状のひとつとしても見られるようです。
そうなると、オウム返しをする子どもは発達障害なのか?と心配になる方もいることでしょう。
この記事ではオウム返しについて解説していきますので、正しい知識を得て不安を取り除くお手伝いができればと思います。
目次
オウム返しをしたら発達障害なのか?
実は「オウム返し=発達障害」ではありません。定型発達でも見られる現象で、同じ言葉を繰り返すこと自体は成長の過程で見られる行動です。
その頻度も個人差があるため、多いからといって発達障害とは言えないでしょう。
オウム返しはエコラリア(ギリシャ語で「繰り返し話す」の意味)とも呼ばれており、聞いた言葉をそのままマネて言ってしまう行動を意味します。
オウム返しをする要因
言葉を覚える方法のひとつとして、オウム返しが用いられる場合があります。
定型発達では、1歳~2歳ごろの言葉を覚え始める時期に現れるとされる一般的な現象です。
出現する時期や頻度、期間には個人差があります。
オウム返しの種類と原因の違い
同じオウム返しといっても、大きく2つに分けることができます。それが「即時エコラリア」と「遅延エコラリア」です。
それぞれの違いについてご説明しましょう。
即時エコラリアとは
一般的なオウム返しのイメージはこちらになるでしょう。まさに、聞いた言葉をすぐに言い返してしまう状態です。
例えば
この大竹さんのように、直前に聞いた言葉を繰り返します。原因としては、言葉の意味を理解できていない場合が多いです。
- 質問の意味が分からない
- 答え方が分からない
- 単語として分からない など
確認のために言葉を繰り返している可能性もあります。
即時エコラリアの例として、30秒程の短くて分かりやすい動画がありましたのでご覧ください。
左側の男の子の誕生日をお祝いしているところで、「おめでとう」と言われたあとにすぐ「おめでとう」と返しているのが分かります。
遅延エコラリアとは
こちらは、聞いた言葉が遅れたタイミングで繰り返されるものを意味します。
会話や質問に対して、関係のない言葉が突然出てきて繰り返される時は、遅延エコラリアが考えられるでしょう。
- 歌のワンフレーズ
- テレビCMのセリフ
- 両親から言われた言葉 など
多くのケースでは、本人が気に入っている言葉を繰り返す傾向にあるようです。
遅延エコラリアの言葉に対して、周りが過剰に反応するとかえって頻度が増えることがあります。
逆に無関心になるとかんしゃくを起こしてしまう原因にもなるため、適度に共感する姿勢が大切です。
遅延エコラリアが頻回な子の特徴として
- ひとり遊びが苦手
- 絵本がうまく読めない
- 色々な遊びができず特定の言葉遊びをしている
- 必要な言葉が分からず無関係なほかの言葉で伝える など
「〇〇したい!」という思いをうまく伝えることができず、無関係の言葉を使って表現しようとしている場合、伝わらないストレスがかんしゃくにもつながりやすいでしょう。
発達障害と定期発達のオウム返しの違い
オウム返し自体は発達障害でも定期発達でも見られますが、続く期間の長さに違いがあります。
より違いを理解するためには、発達障害の特徴も知っておく必要があるでしょう。
発達障害で起こるオウム返しは、あくまで特徴のひとつとして位置づけられており、比較的長い期間続く傾向にあります。
オウム返しが特徴の発達障害とは
発達障害といってもさまざまな特性があり、その違いによって大きく3つに分かれています。
- 自閉症スペクトラム障害(ASD)
- 注意欠陥多動性障害(ADHD)
- 学習障害(LD)
そして、特にオウム返しに関係するのが「自閉症スペクトラム障害」です。次に少し詳しく解説していきます。
より他の症状も詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。早期発見に必要な兆候も知ることができますよ。
自閉症スペクトラム障害とオウム返し
自閉症スペクトラム障害は社会的コミュニケーションが苦手で、人に対する関心も薄いのが特徴です。
重症度は様々ですが、言葉の遅れ、反響言語(オウム返し)、会話が成り立たない、格式張った字義通りの言語など、言語やコミュニケーションの障害が認められることが多くなっています。
引用元:厚生労働省 e-ヘルスネット
厚生労働省が情報提供している自閉症スペクトラム障害の症状としても言語に関するものが多く、オウム返しもそのうちのひとつとして入っています。
- 行動や興味に極端な偏りやこだわりがある
- 反復的な行動
- 目線を人と合わせない
- 感覚過敏や鈍麻などの感覚異常
などの多くの特性も併せ持っていますので、学校生活・社会生活で困難を感じることもあるでしょう。
触覚、視覚、聴覚、味覚、嗅覚などの感覚が敏感になっている状態を「感覚過敏」逆に鈍いと状態を「感覚鈍麻」といいます。
過敏では多くのことにストレスを感じやすく、鈍麻では痛みや温度を感じにくいことで身の危険も生じるため注意が必要です。
オウム返しの原因や特徴と自閉症スペクトラム障害の特性は関連性の高い部分が多くあります。
- 興味の幅が狭く絵本などに関心がないことがある
- 遊びが限定的で同じことを繰り返しやすい
- コミュニケーションが苦手でうまく言葉を使えない(覚えにくい)
- 言葉の発達遅れから理解できないことがある
- こだわりが強く好きな言葉や歌が偏りやすい など
これらのように、オウム返しにつながる特徴が多くあるのです。
発達障害にも起こりやすいオウム返しの対応方法
そもそもオウム返しは良いことなのか?悪いことなのか?
現象としては、言葉を覚えるために必要な行動のひとつだとも考えられるため、決して悪いことではありません。
しかし、言葉をうまく吸収するためには周りが正しい対応をする必要があるでしょう。
長期間オウム返しが残ると、他者とのコミュニケーションを阻害する要因になります。
ここからは具体的な対処方法をご紹介します。
定期発達や発達障害に関係なく、オウム返しに対する考え方は基本的に同じです。
即時エコラリアの対応方法
即時エコラリアの場合は、言葉を理解できないことが原因で起こりやすいため、まずは分かる言葉で伝えることが大切です。
しかし、オウム返しを避けるために分かる言葉だけで会話をしてはいけません。
言葉を限定してしまうと、会話を学べなくなってしまいます。分からないことでも少しずつ理解できるように教えていく心構えが大事です。
自分が初めて外国語を学ぶときを想像すると分かりやすいかもしれませんね。
例えば英語で「What’s your name?(お名前は何?)」と初めて言われたら「わっちゅあね?」と思わず聞き返しませんか?同じことが発達の途中では起こっていると考えられます。
即時エコラリアは単語を覚える機会としても有効
「どっちが食べたい?イチゴ?リンゴ?」という質問をしたとします。
そのままオウム返ししてしまう場合には、実物を見せながら「イチゴ?」「リンゴ?」と聞き直すと理解しやすくなるでしょう。
返答が疑問形のまま発音をマネするときは、さらに通常の発音を繰り返すようにすることで単語と発音を覚えることができます。
即時エコラリアの注意点
日常会話の中では、意味が分からずオウム返しをしていても成り立ってしまうことがあります。
言葉を覚えているようで、実はオウム返しだったということもあるのです。特に挨拶は代表例でしょう。
- おはよう→おはよう
- おやすみ→おやすみ
- おなか痛い?→おなか痛い(疲れているだけ)
- お茶飲む?→お茶飲む(本当はジュースが良い…)
というように、自然な会話のようで実は食い違っていることもあるため注意が必要です。
遅延エコラリアの対応方法
即時エコラリアとも共通しますが、どちらの対処も無理に止めさせるようにはしてはいけません。
特に遅延エコラリアの場合は、自己表現の手段でもありますので、すべてを否定してしまってはかわいそうです。本人としても納得できません。
伝えたい思いを適切な言葉にして表現することができない場合は、お手本を示して少しずつ覚えてもらいましょう。
しかし、適切な言葉を伝えるためには、今どのような気分でいるのかを察する必要があります。
まずは子どもがどのように感じ考えているのかについて、日頃から気にかけるようにしましょう。
遅延エコラリアの注意点
遅延エコラリアに対しては『無視をすることで発生を防ぐ』という方法もあります。
しかし、表現したことを無視するということは、コミュニケーションを無視されているという風にも感じとれ、子どもが自己表現をしなくなる可能性もあるでしょう。
つまり、コミュニケーションを取ろうとしなくなった結果、遅延エコラリアがなくなるということもあるのです。
そのため基本的には受容する姿勢を大切にして、指摘をするよりも一緒に言い直すような心構えが必要になるでしょう。
発達障害かも?心配なオウム返しの相談先
オウム返しで「やっぱり発達障害かもしれない」と心配な方は、不安を抱え込まずに専門機関へ相談してみましょう。
発達障害者支援センター
発達障害者支援センターの役割は次のように言われています。
地域における総合的な支援ネットワークを構築しながら、発達障害児(者)とその家族からのさまざまな相談に応じ、指導と助言を行っています。
引用先:発達障害情報・支援センター
事業内容としては
- 相談支援
- 発達支援
- 就労支援
- 普及啓発、研修 など
相談内容に応じて、療育方法のアドバイスや発達検査なども実施可能で、保健、医療、福祉、教育、労働など関係機関への紹介もしてもらえます。
電話での相談窓口もあるので、発達関連で不安のある方は、お近くの発達支援センターへお気軽にお問い合わせください。
医療機関
発達障害という診断は医療機関でしか受けることができません。
先ほどの発達障害者支援センターからも紹介してもらえるため、事前に相談しておくとスムーズに受診もできるでしょう。
診療科としては
- 小児科
- 精神科や心療内科
- 小児神経科 など
一般法人社団 日本小児神経学会には、発達障害の診療ができる医師のリストが公開されています。
都道府県別で医師が在籍している病院も知ることができますので、ぜひ病院探しの参考にしてください。
福祉サービス
こちらは、すでに発達障害と診断を受けている方が対象となります。
サービスにはさまざまな種類がありますが、「放課後デイサービス」はその中でも代表的なものでしょう。
サービス内容としては、放課後や長期休暇などを利用して、子どもの運動や学習を支援しながら療育を行います。
発達支援の専門家が在中していますので、オウム返しやそれ以外の相談も日常的にしやすいでしょう。
放課後等デイサービス「アップ」でも、発達障害を抱えた児童を対象にデイサービス事業を行っています。放課後デイサービスに興味のある方はぜひ覗いてみてくださいね。
まとめ
今回は発達障害とオウム返について解説してきました。
発達の段階によっては、オウム返しは誰にでも起こり得る現象です。
言葉を学習するために必要な現象でもあるので、無理に止めるのではなく、成長に合わせて少しずつ理解を深めていくことが重要になります。
しかし、あまり長期間続く場合は発達障害の可能性も考えられるでしょう。
不安なときは悩み込まずに、早めに相談して不安を解消することも子育てには大切ですよ。