皆さんこんにちは!本日も発達障害等に関する学びや情報交換の場所なることを願って投稿させて頂きます。
今日のトピックは「発達障害をもつ子供のワーキングメモリを鍛え方」についてです。
どうにか改善する方法はないでしょうか?
改善が見込める方法がいくつかありますよ。
子供はなかなか言う事を聞いてくれなかったり、言ったことをすぐ忘れてしまったりと子育てする親御さんとっては大変な毎日と思います。
特に発達障害を抱えているお子さんの場合はその度合いが大きく、びっくりするような間違いや忘れ物で親を困らせてしまうことも多いことでしょう。
そんな私も2児の子供がいる父親であると同時に発達障害を診断されています。私の場合ADHD(注意欠陥多動性障害)があり、多動はありませんが、注意欠陥が強く出ています。
これまで様々な困難を経験しながらも自分なりに改善してきました。
そんな私が「昔の自分にアドバイスするなら」という観点で、子供のワーキングメモリを鍛える方法と、発達障害をもつ子供を伸ばしてあげられるヒントをご紹介します。
ぜひ参考にしてみてください。
目次
発達障害によるワーキングメモリの低さは改善できるの?
ワーキングメモリ(作業記憶)とは短い時間、頭の中で記憶や情報を保ちながら行動、予測、学習、判断などを処理する能力で、生活する上でありとあらゆる場面で必要となる基礎となる能力です。
そもそも、発達障害による、できることの凸凹は改善できるのか?という疑問を感じる方も多いと思います。
結論から言うと改善は可能です。
確かに不得意なことには変わりませんし根本治療は今の所、確立していないのが現状です。しかし、その子の特性や傾向を理解し適切な対応を心掛ければ徐々に改善が期待できます。
また、後述しますが、改善方法として様々なトレーニングを実践することにより、その子の普段気付かなかった特性や長所などの発見に繋がる可能性があります。
その後の人生で伸ばしてあげるポイントや、逆にあまり注力しないで良いポイントなどに気づくことができるかもしれません。
この子はワーキングメモリが低いのかも?気になった時に確認する方法
そもそも、発達障害といっても様々なタイプがあります。例えば、自閉症スペクトラム、ADHD、学習障害、アスペルガー症候群など。
さらに症例が同じでも人によって傾向や症状の強さが違います。
ですのでワーキングメモリ不足の傾向も千差万別で、果たしてワーキングメモリに問題があるのか?について判別できないこともあるでしょう。
そんな時、論理的に数値としてワーキングメモリを計測できる方法がいくつかあります。
・知能検査(WISC)
・ワーキングメモリテスト( HUCRoW )
それぞれについて解説します。
知能検査(WISC)
WISC… Wechsler Intelligence Scale for Children-Fourth Edition の略称で主に発達障害専門病院などで知能検査をする際に用いられるので
診察の際に病院の先生の判断が下れば誰でも受ける事ができます。
世界的な児童用知能検査で5歳~16歳迄の子供が対象です。
ちなみに私は、これの成人版であるWAIS-Ⅳという検査を行い発達障害の診断を受けました。
テストは大きく分けて以下4つが行われます。
検査内容 | |
言語理解 | 類似探し、知識・教養など |
知覚推理 | 行列の推理、ストーリーの絵の順序組立など |
ワーキングメモリ | 出された数字の記憶など |
処理速度 | 特定の図形を探すなど |
このテストを行うと各テスト項目についての点数や思考力の傾向などが数値化された結果を見る事が出来ます。
その上で病院の先生から総合的に判断を聞くことができます。
ワーキングメモリテスト(HUCRoW )
広島大学大学院教育学研究科が開発しているアセスメントツールで、日本の小中学生向けに開発されています。
こちらのページから無料で利用登録ができますが、小学校、中学校、高等学校等の学校で勤務されている方や児童相談所、発達障害の療育、支援に当たられている方に利用が制限されています。
場合によっては学校に相談するなどしてテストを受けさせてもらうのも一つの方法でしょう。
まずは子供を観察して特性を理解する
子供のワーキングメモリを鍛える方法はまず、その子がどんな特性をもっているのかを観察し理解することから始めます。
子供をよく観察していると得意、不得意、好き、嫌いなど特性がわかってくると思いますのでどんな方法が有効なのかも見えてくるはずです。
例えば、「学校にいつも忘れ物をする」というようなことがある場合には、間違えない仕組みづくりをしたり、間違えパターンを把握することである程度予測するなどの方法もあります。
子供とのコミュニケーションの中でそういった情報を共有することで改善手法や考え方なども子供に教える事ができますし、自分で考えるようになることで脳のトレーニングにもなります。
ワーキングメモリを鍛える方法
では、具体的にワーキングメモリを鍛える方法についてご紹介していきましょう。発達障害の子供のワーキングメモリを鍛える方法は以下のようなものがあります。
・放課後等デイサービス
・発達障害者支援センター
・本やアプリの利用
・薬物療法
それぞれについて解説します。
放課後等デイサービス
主に、速読や認知トレーニング、数学や文字の読み書きなど学術的、論理的思考力を鍛えるトレーニングから集中力、周囲の状況を把握するための視覚認知トレーニングなどを実施する施設です。
また、他にもソーシャルスキル(集団活動)やセルフコントロール(感情の制御)などを様々なプログラムを実施する施設があります。人とのコミュニケーションや気持ちを察するといったことが不得手とされる、アスペルガー症候群やADHDの子供にはこれらのトレーニングは特に有効ですね。
放課後等デイサービス施設によっても行われるプログラムは様々ありますので事前に確認して利用するのが良いでしょう。
放課後等デイサービスを利用するにあたっては、療育手帳や障害福祉サービス受給者証が必要なので事前に用意しておく必要があります。
「運動・学習療育 アップ」ではこの放課後等デイサービスの施設を神奈川県横浜市にて運営しています。
アップではワーキングメモリトレーニングに加え、コミュニケーションや運動を取り入れたプログラムも行っています。
各都道府県の知事が発行しており、18歳未満の発達期の子供を対象に発達や知能に遅れがあると判断された場合に発行されます。各児童相談所などで審査を受けることができます。
障害者や難病患者を対象に発行されます。「介護支援」「訓練等給付」の2つに大別されており、発達障害の子供が受け取れるのは 「訓練等給付」 となり各障害福祉担当窓口で申請できます。尚、 「介護支援」「訓練等給付」 では審査方法や手順が異なるので要注意です。
発達障害者支援センター
各都道府県に設置されており施設によっても行っているサポートに違いがあります。
発達障害者支援センターの主なサポート内容は
■相談支援
日常生活での様々な困難や悩み事などの相談ができ、公的な福祉制度や医療機関の紹介などもしてもらうことができます。
■発達支援
発達障害の改善方法などについてのアドバイスや一部検査を実施している施設もあります。
場合によっては児童相談所や医療機関などの関係機関と連携して対応をしてもらうこともできるので困った時の助けになりますね。
■就労支援
就労についての相談があった場合は、相談はもちろんハローワークや障害者就労生活支援センター、地域障害者職業センターなどと連携して情報提供を行ってもらえます。
場合によってはスタッフが学校や企業を訪問して障害者雇用についての紹介や企業の受け入れに対する助言などを行います。
発達障害者は成人して社会に出てから困難に遭遇する事も多いのでこれらの機関と早い段階から連携や相談をしておくと良いでしょう。
本やアプリの活用
現在、発達障害に関する本やアプリが多数出ておりこれらを使って日ごろから家庭でトレーニングを行う事も有効でしょう。
発達障害関連の書籍については当事者の経験を綴った本や支援の仕方の本などもありますが、今回は子供の発達トレーニングになる本という観点で役立つものをいくつかご紹介します。
■教室で使えるコグトレ 困っている子供を支援する認知トレーニング122
学習面、社会面、身体面という3つの観点を強化するトレーニング本。困りごとの原因やアプローチの解説と遊び感覚でできる各種問題が掲載されていて日々のトレーニングに活用できる本です。
■発達障害の子供を伸ばす 脳番地トレーニング
発達障害専門医である加藤俊徳氏が長年MRIでの脳画像診断の経験から、考える時、ものを見る時、運動する時などで、脳のどの部分が機能しているかの見地から、脳の部位を8系統に分けてトレーニング法を解説しています。
■ミスターシェイプのタッチカード
音、形、色など様々な要素が詰め込まれた子供向け知育アプリです。子供が喜ぶ可愛く楽しいゲーム要素が盛りだくさんで親子で楽しんで学ぶことができます。また、全国の特別支援学級などの教育現場でも使用されています。
薬物療法
まず注意したいのが子供の発達障害の改善で最も優先するべきなのはトレーニングや環境改善です。
薬を使用するというのは、それでも日常生活で著しい困難が伴う場合や他者に危害が及ぶ危険がある場合です。
発達障害の症状によって有効治療薬がある場合と無い場合があります。
例えば、ADHDに有効な薬の一つにコンサータという薬があります。集中力や注意力を高めたり衝動的な行動や興奮を抑える効果がありますが、副作用としては食欲が落ちたり、眠れなくなることもあります。
自閉症スペクトラムにはまだ有効な治療薬がありませんが、臨床試験段階の薬としてオキシトシンがあります。経鼻スプレータイプでの検証が進んでおり、同じことを繰り返す常同行動や興味が限定的になる症状に改善があったと報告されています。
(参照:日本医療開発機構 世界初 自閉スペクトラム症へのオキシトシン経鼻スプレーの治療効果を検証しました)
ワーキングメモリを鍛える事が症状の改善に有効な理由
スウェーデンの科学者、トーケル・クリングバーグ教授は自身の研究から「 ワーキングメモリーは脳の可塑的(変わることが出来る)な機能で、集中的なトレーニングで強化可能である 」と語っています。
また、近年発達障害やワーキングメモリのトレーニングに関する研究が多数行われており、一部否定的な見解があるもののワーキングメモリが習得度や学習と深く関係していることがわかっています。
例を挙げると、2008年の福岡県内の公立小学校で実施された研究では、ワーキングメモリの能力と学力には相関関係があることが確認されています。
この調査では、ワーキングメモリが低くても、学力が高い児童はいましたが、ワーキングメモリが高い児童で学力が低い児童は全くいなかったという結果が出ているのです。
(参照:インフィニッドマインド ワーキングメモリトレーニング(脳力道場・読む蔵Jr) – 幼稚園児・小学生・発達障害(学習支援が必要な方)向け- より)
つまり、ワーキングメモリを上げる事ができれば、学習熟度は高い確率で向上すると言えます。
また、トレーニング全般に言えることですが、目的意識を持って取り組むと高い効果が得られます。
例えば、筋トレをする場合、腕の筋肉をつけたいと思っているのに、腹筋をしていてもほとんど効果はありません。少し大げさな表現ですが、ワーキングメモリトレーニングにも同じ事が言えるでしょう。
そのトレーニングでどういった能力が鍛えられるのか?今ある問題に対して最も効果的な方法は何か?などを親子で考えながらトレーニングすれば、より効果が期待できます。手段や方法も考慮に入れてみましょう。
人間力を磨くことも必要
これは発達障害当事者である私の意見ですが、人間力を磨くことはとても重要です。
人間力とは、心を安定させコントロールする力や人を惹きつける力、自己責任能力、継続・忍耐力といった学力では測れない能力のことで、近年ではこれをEQ(心の知能指数)と呼んでいます。
実際にGOOGLEやAPPLEなどでは 社員のストレス軽減や集中力向上、創造力向上を目的に瞑想を研修プログラムに取り入れているのです。
学力と併せて、「人間力」を身につけることで社会に出た後、その人が人生を豊かにできる大きな要素となるでしょう。
まとめ
発達障害を持つ子供は定型発達の子供に比べて困難を抱える場合が多い傾向にあります。
そんな時に子供の支えになるのはやはり親です。失敗することも多いかと思いますが、いつも子供の最大の理解者となってあげてください。
進む速度は遅くとも、親子で改善や工夫を続ければ、後々、振り返った時、大きく成長したことに気づく時が来ることと思います。