皆さんこんにちは!本日も発達障害等に関する学びや情報交換の場所なることを願って投稿させて頂きます。今日のトピックは「認知行動療法と発達障害」についてです。
発達障害に対する精神療法の一つで、認知行動療法と言うものがあるのをご存知でしょうか?
状態の安定や改善に役立つ方法として世界的に注目されており、精神療法としては世界標準になっています。
目次
認知行動療法は2つの治療法の合わせ技
認知行動療法は英語でCognitive Behavioral Therapy(CBT)と言い、そのまま日本語に訳したものです。
実は認知療法と行動療法の2つの治療方法を組み合わせたやり方の総称を言います。おそらくほとんどの方が「そう言われても…」と疑問が増えてしまったかもしれません。
そこで、まずは概要から徐々にご説明していこうと思います。
認知行動療法の目的とは
まずは、この認知行動療法の目的についてです。
- 心を落ち着かせる
- ストレスを減らす
- 自信を回復させる
- 失敗を活かせるようになる
- 辛い、悲しいなど負の感情を早めに取り除ける など
精神療法の一つなので、基本的には心の安定を目的に治療が行われます。
認知行動療法の適応について
精神障害のほとんどに適応されていますので、一部をご紹介します。
- 抑うつ、うつ病
- パニック障害
- 統合失調症
- PTSD(心的外傷後ストレス障害)
- 不安障害 など
もちろん発達障害に対しても適応されますが、二次障害の予防や改善としての意味合いがより強くなります。
発達障害により能力の偏りがうまれ、それが原因でさまざまなストレスを抱える事があります。このストレスが原因で二次的に抑うつや不安障害などを引き起こした状態です。
治療の考え方
抑うつや不安障害などの精神的な症状を治療するためには、まずは症状が出るまでの過程を知ることが重要になります。
過程の中で起こる感情の動きや考え方によっては精神的な症状の出現につながると考えられ、その心の動きや物事のとらえ方を修正し、行動方法を変える事で症状の軽減や改善を目指すものです。
認知療法とは
まず、認知といわれるものは、ものの見方やとらえ方を指す言葉です。人は様々な状況の中で、思考や判断、推測・想像などを繰り返し行いながら生きています。それらすべての認識が認知です。
人によっては、困難な状況や辛い場面での認知がマイナス思考に働いてしまう場合があり、それが精神障害につながる事があります。
そこで、このマイナス思考に働く認知を少しずつ修正するようにほぐしていく事で症状を改善していく方法が認知療法です。
認知症には同じ『認知』という言葉が入るため、認知行動療法が認知症の治療方法だと誤解されている場合がありますが全く関係性はありません。
行動療法
失敗などに対して、実際に別の行動を試してみる事で治療につなげていく方法です。
認知療法は目に見えない部分を修正していきますが、行動療法は目に見える部分を修正していきます。
例えば上手くいかない事に対して
- 自分は下手でダメだ→上手にならなきゃ
- 心が弱い→心を強くしなければ
- 根性が無い→忍耐力をつける
などの内面を原因にせず
- 別の方法だとうまくいくかも
- こうすれば続ける事ができる
- 一気に終わらせず、部分的にやってみる
というように実際の行動を変えて対応する事が重要とする考え方です。
2つの関係性
両方とも、大まかなやり方としてはほぼ同じだと言われています。
似ている点として
- うまくいかなかった事について分析する
- うまく行く別の方法を考える
- 実際に試してみる
- どちらも生活のしにくさを解消する事が目的
など考え方としての方向性が同じなのです。
違う点としては、治療として行う内容が目に見えない認知を修正するか、実際の行動を修正するかで分かれているだけと言えます。根本の目的が同じ2つの治療法なので
自分の考え方(認知)を変える事で、自分の行動が変化する事が解っています。また、行動が変わる事で考え方(認知)も変化する事も解っています。
それらは変えやすい方から、どちらでも変えていけば良いのです。
引用元:CBTcenter
という考え方が生まれ、認知行動療法となったようです。
メリットとデメリット
認知行動療法は科学的根拠(エビデンス)としても証明されていて、世界的にも高く評価されている治療法です。
しかし、100%効果があると言うものでは無く相性の問題もあります。そこで、一般的に言われるメリットとデメリットもご紹介しようと思いますので、参考までにご覧ください。
メリット
- 副作用がない、安全性が高い
- 薬物療法と同じまたはそれ以上の効果が得られる場合がある
- 予防としても使用することが出来る
- 再発の可能性が少ない
薬物を使わないと言う点で多くのメリットがあり、予防としても使えます。
デメリット
- 即効性はありなく、短期的な効果が出にくい
- 効果が出にくい、合わない方もいる
- 提供できる専門機関がまだ少ない
薬物療法のように即効性が無いことと合わない方がいる場合がデメリットとしてはあるようです。本人の認知と行動に働きかけるため、長期的に取り組むことが重要となります。
公開講座として分かりやすく説明されているものを見つけましたので、20分ほどありますが時間のある方はご覧ください。
認知行動療法の具体的な方法
認知療法・行動療法を含め、認知行動療法はとても多くの治療法の総称のようなもので、様々な種類に分かれています。
- エクスポージャー法
- マインドフルネス認知療法
- アクセプタンス&コミットメント・セラピー
- リラクセーション法
- ソーシャルスキルトレーニング など
挙げだすときりが無いほどの種類があり、それぞれ特性や方法論があるので専門家でもすべてを説明することは困難でしょう。
今回は、比較的一般的に用いられているやり方を、厚生労働省のマニュアルを参考に抑うつ状態を例としてご紹介します。
参考元:厚生労働省 うつ病の認知療法・認知行動療法マニュアル(平成21年度厚生労働省こころの健康科学研究事業「精神療法の実施方法と有効性に関する研究」)
認知行動療法の進め方
抑うつ状態の時の思考(認知)パターンとして
- 自分の事をダメだとマイナスに考えすぎる
- 周りの人や物事をマイナスに考え被害的になりやすい
- 「どうせ…」と今後の事を前向きに考えられない
行動のパターンとして
- 活動量が減少して楽しみ等も減り「何もできない」と自分を責める
- ぐずぐずと問題を先延ばしにして、やるべき事がたまる
- 周りに助けを求められず、自分だけで背負い込む
という傾向になりやすいとされています。
気分の良い時にはこれらの逆の良い循環が生まれるため、認知行動療法で思考や行動を修正して気分を良い状態にすることが目標です。
治療は専門機関で行われ、1回30分ほどの面接を16~20回行い状態によって回数を決めます。
まずは自分のストレスに気づく
最初に行う事は、自分自身がどこにストレスを感じているのかを整理する事です。基本的には紙に書きだしていくと分かりやすいでしょう。
- 対人関係に問題がある
- 学業上の問題がある
- 健康面が気になっている
- 楽しみが行えていない など
そして、一つ一つの問題をできるだけ具体的に出していく必要があります。
困りごとについて調べる
ストレスを具体的に出した後は、そのストレスを感じるほどの困りごとについて分析していきます。
いつ、どこで、どのように、時間帯や頻度などを注意深く思い出してみましょう。
自分の感情や行動を調べる
そしてストレスを感じる前後で、自分自身がどのような感情で行動をとっているかを調べていきます。
また、その時の気分の種類と強さを細かく書きだしていくと良いでしょう。例えば、強い怒りや少し悲しいなど、簡単に表して大丈夫です。一つの状況にいくつ気持ちを出しても構いません。
自分の癖に気づく
気持ちや行動を調べていくと、徐々に自分の考えや行動の癖が現れてくることがあります。
悪循環につながっている考えや行動に気づくことができれば、良い方への向かい方も見えてくるでしょう。
自由な視点を持つ
考え方や行動の癖に対して、今度は別の考えや行動が無いかを考えていきます。
自分が感じていたものは、別の考え方をすることで悪くないとらえ方もできると発見につながるのです。
悪循環にはいっているときは、悪い方への考えや行動パターんしかできなくなっています。そこで、それ以外の自由な視点を持つことが治療には有効になるのです。
実際に練習してみる
最後の段階では、今までの癖ではない新しい考え方や行動パターンの練習を実際の場面を想定して行っていきます。
そして、新しい視点と行動の練習を反復して成功体験を得ることで、自分の自信にもつなげていけるのです。
行動活性化
抑うつ状態の時などは、活動性自体が落ちてしまいます。
休養が必要な時は無理をしてはいけませんが、少しでも元気が出ている時は、楽しみや達成感を感じることのできる活動に取り組みましょう。
一気に活動を増やすと疲労感が強まってしまいますので、徐々に活動量を増やしていく方が良いと思います。
認知行動療法の最終目標はセルフヘルプ
セルフヘルプこそが認知行動療法の最大のメリットと特徴だとも言えます。セルフヘルプは、自分自身で悪循環に入る前に気づき、自己修正をしていくということです。
しかし、自分自身で気づくことが難しい場合も多くあると思います。ここでいうセルフとは、自分だけでなく周りの方の気づきも含めてセルフとしている場合が多いです。
自分自身だけでなく家族とも協力して、良い状態の維持や悪循環の予防に取り組みましょう。
認知行動療法はどこで受けることができるか
多くのメリットのある認知行動療法ですが、精神療法のひとつであるため主に受ける場所は心療内科やメンタルクリニック、精神科となります。
発達障害に対しても行いますが、小児科などでは対応している所はまだ多くありません。すでに主治医がおられる場合にはご相談してみてはいかがでしょうか。
また、次のような場所に相談しても良いでしょう。
- 発達障害者支援センター
- 子育て支援センター
- 児童発達支援センター
- 保健所や精神保健センター
ご自分で病院を検索される場合はこちらもオススメです。
ご自分の地域から、『認知行動療法』をキーワード検索をすると対応している病院を調べることができます。
認知行動療法は皆の協力が必要
治療中は特に、病院の面接で教わったことを少しずつ実践していく必要があります。そのため、家族や学校教師などの協力がとても重要です。
また、福祉サービスを利用することでさらに実践の場が増え治療効果を促す事ができます。こちらもご覧ください。
まとめ
今回は、とても治療効果が高く、世界的にも評価されている認知行動療法についてご説明してきました。
内容としては、抑うつなどの精神障害の元になるような考え方や行動を修正するという治療でしたね。
発達障害の二次障害に対する予防や治療効果もありますので、気になった方はぜひ相談されると良いと思います。
最初は言葉だけを聞いてもどんなものか想像がつかなかったと思いますが、少しでも認知行動療法を知っていただき、誰かの助けになれたら幸いです。