皆さんこんにちは!本日も発達障害等に関する学びや情報交換の場所なることを願って投稿させて頂きます。
今日のトピックは「療育と遊び」についてです。
この「療育」という言葉は、障害を抱えた児童に対し医療と教育をバランスよく並行して行うことを指し、「社会的な自立を目標とした取り組み」のことを言います。
この療育に「遊び」が取り入れられているのです。
では、遊日を取り入れた療育とは、具体的にどの様な内容で、実際に効果があるのでしょうか?
この記事で解説していきます。
目次
療育に遊びが必要な理由とは
そもそも、遊びがなぜ必要なのでしょうか?答えはいたってシンプル。
子どもは遊びの中で大きく成長していくからです。
大人がする運動と聞いてみなさんは何を思い浮かべるでしょうか。多くの方が、何かスポーツをする、ランニングや筋トレ、ジムに通うなどを思い浮かべると思います。
子どもの場合の運動は、ほとんどが遊びによるものだといえるのです。つまり、遊びによって身体、精神、思考などさまざまなものが刺激され成長につながるといえます。
子どもの主に身体を使う遊びの意義を、文部科学省 幼児期運動指針を参考にして次にまとめました。
遊びを通して体力や運動能力が向上する
人間が何かしらの活動をするときには必ず体力が必要になります。体力が無ければ、精神的にも満たされることが少なくなり、意欲や気力が湧いてこないでしょう。 基礎体力をつけるために、子どもの遊びはとても重要となるのです。
また、幼児期には特に神経機能がよく発達するため、力をコントロールしたり動きを合わせたりと身体の運動を調節する能力が特に向上します。
この能力が向上することによって、さらに器用な動きが可能になり、新しい動きなどを身につけやすくなるのです。
遊びを通して身体を動かすことで、活動の源になる体力が備わり、身体を上手に動かすための基礎を作っていくことができるでしょう。
健康的で丈夫な体を育む
丈夫でバランスのとれた身体を作るためには、子どものうち、特に幼児期の適切な運動が大切です。
習慣的に遊ぶ機会を設けることで、継続的に身体のさまざまな機能の発達が促され、大人になった後でも生活習慣病になるリスクを減らすことができると考えられています。
楽しく遊び意欲的に取り組む心を育てる
遊びながら色々な活動を行うことにより、成功体験が得られる可能性があります。
この成功体験を得るということはとても大事で、意欲や有能感、自信などにもつながり、何事に対しても意欲的に取り組む心を育むために重要です。
遊びの中で社会の適応力を身に着ける
子ども達の中にも立派な社会があります。徐々に多くの友達と遊ぶようになると、その中でさまざまなルールやコミュニケーションが必要になるでしょう。
集団の中では、自分を抑えることやルールを守ることなどの社会的に必要な経験を積むことができます。その経験が社会での適応力を育むことになるのです。
多くの遊びを経験して認知的な能力も向上する
遊びを通して成長を促されるのは身体だけではありません。運動や判断、コミュニケーションなど全ての行動はとても脳の刺激になるのです。
豊かな創造・想像力を育むだけでなく、知的機能の発達促進にも有効だと考えられており、総合的な認知的能力の向上につながるでしょう。
療育につながる遊びとは
遊びにはとても良い効果があるのは分かりましたが、療育として考えた場合には目的別にいくつかに分けることができます。
感覚遊び
主に視覚や聴覚、触覚などの感覚に働きかけて楽しむ遊びです。感覚の中でも初歩的な遊びといえます。
- 目で追いかける
- 音に反応する
- 肌に触れて様々な感触を楽しむ
などがあり、身体を積極的に動かさなくても楽しむことができるでしょう。
運動遊び
運動遊びでは、積極的に身体を動かして楽しむことになります。発達にかたよりがある場合は、感覚遊びを好む傾向や単純な動き(走る・飛ぶなど)ばかりで楽しむ傾向など、行動の特性が現れることがあるでしょう。
定型発達であれば、遊びを通し徐々に複雑な動きができるように変化し成長していきます。
運動遊びは身体を動かしますが、刺激されているのは身体だけではありません。
- バランス感覚(前庭覚)
- 筋肉、関節の感覚(固有覚)
- 触覚
これら3つの感覚は、総合的な運動や行動にとても重要な役割を果たしており、発達のためには感覚統合が課題とされています。
発達障害の子どもなどに用いられるリハビリテーション方法のひとつです。前庭覚・固有覚・触覚の3つの感覚の発達を促し、それぞれをうまく統合していくことで適切な成長につなげていこうとする考え方をいいます。
実際のリハビリテーションの動画を見つけましたので、参考までにご覧ください。撮影の許可がおりにくいらしく、動画が公開されているのは貴重のようです。
また発達にかたよりのある場合には、特定の運動遊びを多く取り入れることで生活を困らせている行動などを改善・軽減させることができるという考え方もあります。
落ち着きのない子には揺れる遊び
落ち着きがなくじっとしていられない子の場合、身体により強い刺激を取り入れることで心地よいと感じている可能性もあるようです。
その場合は、バランス感覚や筋肉・関節の感覚の未発達が原因といわれているため
- トランポリン
- ハンモック
- ブランコ
- バランスボール など
大きく揺れを感じる遊びを行い、感覚の発達を促すようにします。
上記以外にも、布団でゴロゴロと回転したり、毛布に乗せて引っ張ったりとバランスや動きを感じる遊びを意識すると良いでしょう。
肌ざわりにこだわる子は触覚遊び
ある特定の洋服しか着たがらない子どもの中には、肌ざわりに強いこだわりがある可能性もあります。
触覚の発達が足りていない場合に見られやすい現象といわれていますので、子どもが心地よいと感じるような触覚を与える遊びをしましょう。
- 砂場遊び
- 水遊び
- やわらかいブラシやスポンジで手足をなでる
- 粘土やスライム など
色々な触覚刺激を意識した遊びを取り入れると良いと思われます。
乱暴する子には筋肉を働かせる遊び
感情的になる以外にも、力のコントロールがうまくできていない子が友達を強く叩くことがあります。
そのため、筋肉や関節の動きの感覚をつかめるような遊びを取り入れて、コントロールを身に着けることで改善する場合があるのです。
- 相撲や綱引き
- 上り棒
- ツイスター
- だるまさんが転んだ(走って止まる繰り返し)
言葉の発達も運動遊びにより促される可能性あり
言葉の発達の考え方のひとつとして、身体の発達が不十分だと言葉の発達も遅れやすいという考えがあります。
これは、人間の成長には段階があり、身体のコントロールが十分に行えるほど脳が発達して初めて次の段階にすすめるというものです。
想像遊び
想像遊びとして最も多くて分かりやすいものは『ごっこ遊び』です。
家族の設定でお父さん役お母さん役や架空の戦隊ヒーローになりきって遊ぶことにより、色々な立場を想像して理解していくことができます。
また、社会的な役割なども自然と身に着けることができるため、重要な遊びのひとつだといえるのです。
発達に偏りのある場合には、特に現実離れした想像遊びを一日中続けることもあるため、現実と想像の区別がつかなくなる危険性があるので注意しましょう。
受容遊び
絵本を見る、物語を聞くようなことを受容遊びといいます。豊かな感情や知的好奇心の発達に関わる遊びといえるでしょう。
年齢や発達、理解力や好みによって好きな絵本などが変わってきますが、興味関心の範囲が極端に狭くならないように注意が必要です。
受容遊びを上手に使い、少しずつ現実的な体験につなげていき興味関心を広げていけると発達に大きく結びつくでしょう。
構成遊び
さまざまな物を作り出す遊びを構成遊びといいます。
- 積み木
- お絵描き
- 折り紙
- 粘土遊び など
想像したものを作り出すことで喜びを感じる遊びとして知られているものがほとんどです。
近年はキャラクターの人形や車、電車などの完成されたおもちゃが主流となっているため、想像して作り出す機会が少なくなっています。
発達に遅れのある場合は、イメージすることを苦手とする場合が多くあるため、できる範囲で想像する機会を与えることは重要となるでしょう。
おもちゃにも色々な種類があり、療育に役立つものも多くあります。おもちゃに関する詳しい情報はこちらをご覧ください。
療育と遊びについての相談先
すでに発達障害などの診断をしてもらっている場合には担当医に相談するのが一番ですが、「もしかして…」と悩まれている方は、まず下記の相談窓口に電話だけでもしてみると良いでしょう。
- 発達障害者支援センター
- 子育て支援センター
- 児童発達支援センター
療育についての取り組みは地域によって様々です。療育センターや療育教室などが開かれている場所もありますので、合わせて確認されると良いと思います。
療育の専門家
小児神経専門医
発達障害の診断をつけることができるのは小児科や小児の精神科などですが、その中でも特に必要な知識や技術、経験を持っていると認定された医師が小児神経専門医と呼ばれています。
「成長発達期にけいれん、運動、知能、感覚、行動、言葉やこころの問題などの神経系機能障害をおこす病気の診療に必要な知識・技能・経験を持っている」と日本小児神経学会が認定した医師のことです。
引用元:一般社団法人 日本小児神経学会
お近くでこの認定を受けた医師が在中する病院を探したい方はこちらからどうぞ。→日本小児神経学会 専門医を検索
作業療法士(OT)
身体障害・精神障害・小児など幅広い分野で活躍できるリハビリテーションの国家資格を持つ専門職です。
特に活動などの作業に特化したリハビリを提供し、小児分野の作業療法士は療育や遊びのスペシャリストといえます。
この作業療法をトピックにした記事があります。よければ併せてご覧下さい。
福祉サービス
主に診断を受けた後になりますが、福祉サービスを利用して遊びを通した療育を受けることができます。
代表的なものを次にあげますので合わせてご覧ください。
まとめ
今回は療育という言葉の意味から、遊びの重要性を説明してきました。
やはり子どもの遊びには多くの意味があり、発達や成長に大きくかかわっているという事が分かりましたね。
療育としての遊びには専門家がいますので、お子様の発達をさらに促すためにも、プロの技術とアドバイスを受けて皆で支えていきましょう。
また、子育てに向けてのお役立ち情報では、発達障害に関する様々な情報記事を公開しています。ぜひ参考にご覧下さい。