兄弟や姉妹で広汎性発達障害になる確率はどのくらい?

広汎性発達障害が一卵性双生児において一致する確率は70~90%です。
その遺伝率は90%とされていて、遺伝因子が広汎性発達障害の発症に大きく関係しているとみられています。

このように、一卵性双生児の研究では、非常に高い確率で兄弟・姉妹二人ともが広汎性発達障害になる報告されています。
ただ、兄弟・姉妹共に障害を発言するかについては、具体的に確率が出ているわけではありません。

遺伝的要因の可能性は有力視されていますが、兄・姉が広汎性発達障害だからと言って、必ずしも弟・妹が広汎性発達障害を発症するとは限らないのです。

広汎性発達障害の男女における発現率の違いとは

「DSM-5」では、広汎性発達障害(PDD)のほとんどを「自閉症スペクトラム障害(ASD)」に分類しています。
広汎性発達障害(レット症候群・障害を除く)と自閉症スペクトラム障害は、ほとんど同じ群を指しています。

アメリカ疾病管理予防センター(CDC)の統計データでは、自閉症スペクトラム障害の割合は男子で42人に1人・女子で189人に1人です。
男子の発現率は女子の発現率の約5倍となっていることがわかります。

これはアメリカのデータですが、世界的にみても、広汎性発達障害は男性の発現率が高いと言われています。
なお、レット障害(レット症候群)の場合、そのほとんどが女性に発現します。

広汎性発達障害の検査方法とは

出生前の妊娠中の段階で、広汎性発達障害を検査する方法は現在のところありません。羊水検査やエコー写真を用いても不可能です。

原因遺伝子が確定されているレット障害(レット症候群)の場合、出生後に遺伝子検査ができる場合もあります。
ただ、そのほかの広汎性発達障害に関しては、出生後でも、血液検査や遺伝子検査などの生理学的方法で検査は不可能です。

一般的には、子どもに何らかの症状・特性が見られてから、心理検査や知能検査、保護者に対しての問診、子どもの観察、学校や家族からの情報提供から診断が下されます。
診断基準には主に『DSM-5』や『ICD-10』が用いられます。

診断は様々な情報と検査の結果を組み合わせ総合的に行われ、経過を観察しながら慎重に行われます。

広汎性発達障害の発現原因については、今も様々な研究が行われています。
レット障害に関しては、原因遺伝子の発見という大きな成果も上がっています。

しかし、今後遺伝の可能性が判明して羊水検査ができるようになったとしても、断定することができるようになるのはそう容易ではありません。
遺伝子変異から症状を予測することも、困難とされています。

このことから、遺伝の可能性を考えたり原因を探ることは、一人一人の支援においてそれほど効果的とは言えません。
広汎性発達障害の人が現在抱える困りごとに向き合い、一緒に解決することが必要です。
障害に関する正しい知識を持ち、早期療育や環境調整などの支援を行いましょう。