皆さんこんにちは!本日も発達障害等に関する学びや情報交換の場所なることを願って投稿させて頂きます。
今日のトピックは「発達障害児はなぜ生まれるか」についてです。
目次
発達障害児が生まれる原因
発達障害の原因は、近年の医学的・生物学的研究の結果、遺伝性要因と環境性要因が複雑に関係していると分かってきています。
ASD の発症には遺伝性要因だけでなく,環境性要因の 両方が深く関与し,特に小児,発達期の脳が多様な要因に脆弱性を持つことが深く関係していると考えられる. 遺伝性要因には,染色体微細構造異常(コピー数多型), 一塩基多型(SNP),遺伝子変異,DNA メチル化やヒストン 修飾などのエピジェネティック制御などがある.遺伝子変異 やコピー数変化の傾向は,家族性よりも孤発性遺伝形態であるレアおよびde novo ケースが多く,コーディング領域上のde novo 変異は,父親の年齢と相関があるといわれている6).
発達障害における遺伝性要因(先天的素因)について-日本小児神経学会学術集会
遺伝性要因と環境性要因
遺伝性要因
そもそも遺伝子とは
遺伝子を簡単に説明すると人間の体を作る設計図のようなもので、体型や顔の特徴的なプログラムが記されたコードのようなものです。
また、人間の身体は細胞からなっており、細胞内の核の中に染色体があり、染色体の中のDNAという1ページに遺伝子(遺伝情報)が記されているとイメージしてください。
ゲノム異常とは
ゲノムを例えるなら生物が持っている遺伝子(遺伝情報)が全て記されているノート1冊です。つまり、人間に置き換えると、ヒト1人分の遺伝子情報コードが全て書いてあるノート1冊分というとわかりやすいのではないでしょうか。
よって、通常ヒトは父親から1冊、母親から1冊の合計2冊を受け継ぎ、それぞれの遺伝子を持ち合わせます。言い換えれば、それぞれのゲノムのコピーを1冊ずつ受け継いでいるというとわかりやすいでしょうか。
ちなみにこの2冊のゲノムは22対(44本)の常染色体と1対(2本)の性染色体、合計46本の染色体を受け継ぎます。
そして、この中で遺伝子情報コードの違い(先ほどの例に置き換えると遺伝子コードのコピーが正常にコピーされなかった状態)をゲノム異常といい発達障害の一つの原因と推測した上での研究が進められています。
よろしければ動画をご覧ください↓
動画では、それぞれ1〜22までの染色体のうち15番目の染色体にゲノム異常(重複)があり、それが発達障害の自閉スペクトラム症(ASD)に起因している可能性が高いと解説しています。
例えば父親の1冊のコピーが15ページの単語が1つだけ抜けていたとか、母親の15ページ目を2回コピーしていたとイメージしてみるとわかりやすかもしれません。
コピー数多型とは
先ほど通常ヒトは父親から1冊、母親から1冊の合計2冊を受け継ぎ…と説明しましたがこれを2倍体と言います。
この中の1〜22までの染色体のうち片方の親からのコピー情報を受け取らなかったり(1倍体)、片方の親からコピー情報を2枚(1.5倍体)もらったりすることをコピー数多型と言います。
そして、動画ではこのコピー数多型の中でもde novo mutation(デノボムテーション)が多いと話しています。
和訳すると突然変異という意味で、ここでは両親は定型発達であるが、この両親から生まれる子の遺伝子にコピー数多型の突然変異が発生すること。
同じ遺伝子を持つはずの一卵性双生児は?
双子の兄弟姉妹が発達障害の場合、もう1人も発達障害である確率は一卵性双生児の場合60〜92%で、二卵性双生児が0〜28%といわれています。
遺伝性要因だけが原因であるならば、同じ遺伝子情報を持つはずの一卵性双生児はどちらも発達障害児となり100%になるはずですので、遺伝性要因だけが原因ではないことがわかります。
環境性要因
遺伝性要因の他に研究が進められている要因として、環境性要因があり以下の点が考えられています。
- 妊娠中の母体からの影響(栄養状態や養育環境など)
- 腸内細菌
- 感染症
- 親の年齢(特に父親の年齢)
親が悪いわけではありません
脳の構造上の特性による発達の遅れがありますが、早期療育を受け本人のスキルを訓練し、環境整備することで安定的な日常生活を送ることが可能と言われています。
また、親によっては育て方や食べ物が悪かったなど自分たちを責める方も少なくありませんが、そのようなことは決してありません。
発達障害は先天的なものですので、生まれつきの個性です。よって生まれた後の接し方などが原因ではないのです。だから、決して自分を責めたりしないでください。
生物学的研究結果
ヒトと同じゲノム異常でモデルマウスにも自閉症らしき症状
先ほどの動画でヒトの15番染色体にゲノム異常(重複)があると発達障害の可能性が高いとありましましたが、今度はそれを立証するためにマウスによって実験しています。
ヒトの15番染色体はマウスの7番染色体の領域に値するそうで、この7番染色体のゲノム異常を与えたところ、通常の野生マウスとは違う動き、超音波を発する回数、トーンなど自閉スペクトラム症(ASD)らしき症状が現れたようです。
つまり自閉スペクトラム症(ASD)の原因がこの15番目の染色体のゲノム異常の影響という確実な証拠が得られれば、この部分を操作することで自閉スペクトラム症(ASD)の特性を軽減できたり、希望するなら無くすことができるのではないでしょうか。
ゲノム異常のモデルマウスの縫線核の活性が下がった
脳の活動を確認できる機械で、自閉症モデルマウスの脳を確認したところ縫線核(ほうせんかく)の活性が低下しているとの結果がわかったそうです。
縫線核の活動はセロトニン神経から大脳皮質に関連しており、活性が低下すると気分や記憶、睡眠などに影響を及ぼすようです。
発達障害児でも誰でも生きやすい社会を
ノーマライゼーションという取り組み
障害のある人もない人も、互いに支え合い、地域で生き生きと明るく豊かに暮らしていける社会を目指す「ノーマライゼーション」の理念に基づき、障害者の自立と社会参加の促進を図っています。
引用元:厚生労働省-障害者の自立と社会参加を目指して
ノーマライゼーションとは
私たちが暮らす社会はいわゆる健常者のために整備されてきたものであり、障害を抱える人にとっては「暮らしにくい」「生活しにくい」「生きにくい」という面があります。
そのために、今まで作り上げてきた基盤や社会の仕組みを変えていくことが必要となります。そのような社会の変革を具体化するためのアプローチ法で、1959年に誕生したデンマーク発祥の考え方が日本でのノーマライゼーションです。
日本では1980年代に入ってからの「国際障害者年」の制定をきっかけに広く知られるようになりました。
詳しくはこちらをご覧ください。↓
参考元:全国地域生活支援機構-障害者の方が暮らしやすい社会づくりノーマライゼーションとは?
ノーマライゼーションの輪を広げよう
ノーマライゼーションの一部という考え方にユニバーサルデザイン、バリアフリーというものがありますが、誰もが一度くらいは耳にしたことがあるのではないでしょうか。
これは、身体障害者や高齢者に対する概念が強く、発達障害者向けとは言えません。よくあるように、発達障害者とは周りからわかりにくい面があるため、発達障害者にとってのノーマライゼーションは難しい一面もあります。
しかし、一人一人が暖かい支援の輪を広げ、発達障害者を含む全ての人に目を向けることでその人の困りごとを発見し理解することで、見えてくる課題があると思いませんか。
その課題をみんなに広げ、解決するように働きかけることがすごく大切です。みんなでノーマライゼーションの輪を広げていきましょう。
相談機関の活用
先述したように、発達障害は生まれつきの個性です。よって生まれた後の接し方などは関係ありません。
後ろ向きな気持ちでは、発達障害のお子さまへの支援どころではありません。何よりそんな気持ちでは親もうつ病などの精神障害になってしまうこともあるのです。
どうか、1人で悩まず病院や専門機関での力も借りて負担を軽減するよう心がけましょう。
児童発達支援センターは地域の障害のある児童を通所させて、日常生活における基本的動作の指導、自活に必要な知識や技能の付与または集団生活への適応のための訓練を行う施設です。
発達障害者支援センター は発達障害児とその家族が豊かな地域生活を送れるように関係機関と連携し、地域における総合的な支援ネットワークを構築し発達障害児とその家族からのさまざまな相談に応じ、指導と助言を行っています。
発達障害のお子さまを育てるのは決して簡単なことではありません。心理的ストレスの軽減を図ることも大切です。
障害を抱えたお子様の療育と保護者の方の休息にデイサービスの利用も良いかもしれません。
まとめ
いかがでしたか。
発達障害児が生まれる原因が分かれば、事前の予防や本人が望むなら強すぎる特性を軽減したり、なくしたりできる可能性も期待できます。
今回の結果は、発達障害の原因の一端かもしれませんが、これが解明されれば他の発達障害特性の原因も分かってくる可能性は高いのではないでしょうか。
しかしながら、発達障害の原因の全てが分かった訳ではありません。発達障害のお子さまの育児は大変です。
1人で悩まず、ご両親やご近所さん、社会全体が見守ってくれる生きやすく暮らしやすい社会になるよう、ひとりひとりがノーマライゼーションの輪を広げていきましょう。