今日も皆さんと一緒に発達障害等に関する学びや情報交換の場所となることを願って投稿させて頂きます。 今日のトピックは「ソーシャルスキルトレーニング」についてです。
発達障害を抱える方の困りごとに“伝え方の難しさ”があると言われます。
- 仕事を任されたけど、不明な点を確認したいが言い出しにくい…。
- 会社での飲み会を上手に断れない…。 など
言い出すのに勇気が必要な時はありますよね。
発達障害のある方にとってはもっと困難で「こんな伝え方でいいのかな?」と考えながら会話するので、自信がなく疲弊し人と会うこと自体が億劫になってしまうことが多いようです。
伝え方に自信をもつとリラックスして人と関わることができますよね。そこで、お勧めなのが“ソーシャルスキルトレーニング”です。聞いたことがない方も多いのではないでしょうか?
主に精神疾患のリハビリテーションとして行われている「社会生活において対処法や伝える方法を学んで練習するトレーニング」のことです。
ソーシャルスキルトレーニングの解説、発達障害の方にとっての学ぶメリットや学べる場所について取り上げます。

目次
社会に対する適応力を身につけよう

社会には、様々な人が日々仕事に勤しんでいます。職種によっては、臨機応変な対応を求めれられる場面も多いでしょう。
発達障害を抱えた人は、「臨機応変な対応」や「人とのコミュニケーションが苦手」という人が多くいます。
障害による影響で、同僚や上司との会話が噛み合わ無い、失敗が多いなどの場面は少なくありません。
「この仕事向いてない…」と投げ出してしまう人もいるでしょう。
しかし、社会の一員として働く為には「人とのコミュニケーションは不可欠」です。勿論、障害の有無に限らず、失敗してしまう時はあります。
ソーシャルスキルトレーニングは、そんな障害を抱えた人達の為に「社会に対する適応能力を磨く訓練」を行える環境です。
最初は出来なくても、少しずつ社会に適応できる様になれば、今以上に毎日の生活が明るくなることが期待できます。
ソーシャルスキルトレーニングとは?

ソーシャルスキルトレーニング(Social Skill Training)は日本語訳で「社会生活技能訓練」と言い、”SST”と略されます。
統合失調症の方に向けた疾病管理・生活スキル・対人場面のリハビリテーションを行う治療法として欧米で生まれ、日本でも実践されるようになりました。
保険医療機関において入院されている方を対象として「入院生活技能訓練療法」が診療報酬化されています。
参照元:一般社団法人SST普及協会
上でも触れている通り、「コミュニケーションが苦手」という人は少なくありません。
SSTを取り入れることで、人とのコミュニケーション能力の向上、さらには「身だしなみ」などを含めた「社会に対する適応力を身につける」ことが見込めます。

問題解決技法とは?
問題となるテーマを具体的に挙げ、そのテーマを解決する為のアイデアを挙げていく方法です。私たちが行動に移す為に日常において何千、何万回と頭の中で行っていることを明らかにしていくような手法です。
アイデアを挙げる時は、明らかにデメリットと思われるアイデアもシンプルにテンポよく挙げていくことがコツです。
次にアイデアに対する、メリット・デメリットを挙げていきます。最終的に、そのテーマを出した方にどのアイデアを採用したいかを選んでもらいます。
選んだアイデアを実際に試し、実際はどうだったか感想を聞くことでグループで共有します。また、選んだアイデアによってはセリフの練習の必要がある場合はロールプレイにつなげて練習します。
集団で行うことで、一人ではなかなか考えつかないたくさんのアイデアに出会えることとみんなで考えてもらうことでの安心感があります。
注意焦点づけ訓練とは?
“話を聞く時には、話す人の方を見て聞く”“話をする時は聞く人を見て聞く”と言ったマナーをグループで毎回セッション毎に共有します。
こういったことをしっかり習うのは小学校の時くらいではないでしょうか?意外と聞く・見ることをしっかりと意識してこなかった方が多く、大人の方に向けたSSTにおいても実施されます。
このマナーを毎回共有することで集中して見て聞くトレーニングを行うことができ、実際の場面で自然に行えるようになることが目的です。
ロールプレイとは?
“上司に仕事の質問をしに行こうとしたらに他の人が話していた。至急案件だったが、声をかけていいものか分からず後で声をかけに行ったら
「もっと早く聞きにきてよ」と言われたがどうしていいか分からなかった。”という場面。
この場面について至急案件だったのですぐに声をかけに行くべきという対処行動について共有します。次にそこに付随する声のかけ方、いわゆるセリフをみんなで考えます。
Aさん
「“お話し中失礼します。ご質問があるのですが”から伝えるのはどうですか?」
Bさん
「私は“お話中失礼します。〇〇の件について質問があります。”から伝えた方が良いと思います。」
という風に意見を交わしながらセリフを考ます。
その後、板書し視覚化したセリフに従って練習をします。セリフを考えるだけでは実践に繋がりにくいからです。机などを使って職場と同じセットを作り、上司に似た人に相手役をしてもらいます。
この時のポイントは、上司は実際の場面ではどんな対応や返事をするか分からないのであくまで発信の仕方を練習します。
完璧なセリフを練習するというよりも、安全安心な伝え方を練習することで伝えることへの自信をもってもらい、スムーズな対人関係を築けるようになることが狙いです。
ロールプレイを行った後、グループのメンバーより良かったことをフィードバックしてもらえることで自信につながります。
発達障害の方にSSTがお勧めな理由
型を覚える・反復することが得意
発達障害の特徴に“マニュアルや型を覚え、覚えたことを反復することが得意な反面、自由度のある仕事や曖昧な指示については困難さを示す”が挙げられます。
対人場面では、様々なパターンがありますがそれを全てマニュアル化して覚えることは困難です。また、それを覚えても微妙にパターンが変わることがあるので覚えたことをそのまま使うのは難しいです。
SSTでは型を練習します。同じジャンルの場面で使える伝え方を練習するのですが、その際の声のトーンやタイミングも含めて練習しますので要は角の立たない伝え方=安心安全な伝え方を体感できます。
ですので、型を覚えることが得意な発達障害の方にとっては練習したそのままを実践で行えば良いという安心感をもつことができます。
セッションが視覚化しながら進行する
集団でのSSTで板書しながら行うのが一般的です。
聴覚情報が苦手な方が多い発達障害の傾向をフォローする部分でもあります。どの点を議論しているか、何の目的でセッションしているのか、リーダーが指し示しながら進めるので迷走しそうになった時にはそこに注目すれば良いのです。
そういった安心できる環境の中で繰り返しの練習を行うことで技術が身につき易くなります。
安心できる場所で練習ができる
SST中に、体調不良やセッション内容の影響を受け嫌なことを思い出して気分が辛くなった時に避難できる場所が設けらています。
体調や気分が辛くなったら、近くのスタッフに声をかけ我慢することなく席を離れられ、いつでも戻ってくることができるようになっています。
自信につながる
また、ロールプレイで自分が実践した際に、グループメンバーより良かった点のフィードバックを受けることができます。
発達障害の方の中でできない点を指摘され傷ついた体験をされた方がおられますが、ポジティブなフィードバックを受けると嬉しく思うでしょうし、それが自信につながります。
ポジティブなフィードバックを行う立場においても、自信をもつことにつながると思います。
人を褒める機会が自分からは見つけにくく褒める機会がないことでSSTの場で褒め方や褒めるポイントが分かる点がメリットと言えます。人の良い点が見える・分かることで人の良い点を自分に置き換えることもできます。
SSTを受けたい!でも、どこで受けられるの?

精神科・心療内科に併設されているデイケアやリワーク、就労移行支援施設、小学校などの教育現場、児童療育施設、児童発達支援施設、職場、民間のSST事業所で受けることができます。また、書籍で学ぶことも可能です。
デイケアやリワークでは集団プログラムの枠で行うことが多く、費用はデイケア利用料金(自立支援医療利用で1日利用820円、他障害者手帳利用等で料金に変動あり)に含まれます。
教育現場では教員がSSTを学習し生徒の問題解決に役立てられていることが多いそうです。
民間の事業所では、利用時間で利用料金が変わります。この記事では集団で行うSSTのメリットを挙げましたが、マンツーマンで行うことのメリットを挙げている事業所もあります。
マンツーマンで行っておられるのでインターネットテレビでの対応も可能とのことです。
まとめ
この記事では主に集団で実践されているSSTの発達障害の方にとってのメリットについて取り上げました。
居住地によって、またデイケアや就労移行支援施設を利用しているかどうかによってもSSTの利用のし易さに個人差が出てしまいます。
また、SSTの利用の仕方や具体的な料金については実施されている施設に直接お問い合わせされることをお勧めします。