今日も皆さんと一緒に発達障害等に関する学びや情報交換の場所となることを願って投稿させて頂きます。
今日のトピックは「発達障害の適職」についてです。
発達障害の特性に合った仕事を選ぶためにはどうすればいいでしょうか?それにはまず「自分には何が得意で不得意なのか」を知る必要があります。
今回は発達障害別に合った仕事例をお伝えするので、是非参考にしてください。


目次
自閉症スペクトラム(ASD)の場合

自閉症スペクトラム(ASD)とは、多くの遺伝的要因が複雑に絡むことで現れる脳機能障害の一つです。
自閉症スペクトラム(ASD)の特性
- 言葉の遅れ、オウム返し、会話が続かないといった言語コミュニケーション障害
- 他者への関心が薄く、人間関係が希薄
- 興味や関心が一点集中しがちなのでこだわりが強い
- 感覚過敏・感覚鈍麻
参考元:ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について | e-ヘルスネット(厚生労働省)
以上のような特性により、コミュニケーションやマルチタスクが必須である集団生活において、自身が周囲に溶け込めず孤立する可能性があります。
向いている仕事
具体的な指示を伝え、一人で集中できる環境があれば、自閉症スペクトラム (ASD) の特性を長所として生かせます。
コミュニケーションが複雑ではない | 興味の活かせるジャンルの工事ライン作業・組み立て作業 |
一人でコツコツ行う | 清掃業や在宅での内職、データ作成や編集作業 |
一点集中 | 上記データ作成や編集作業のほかに 研究職やプログラマーなどの集中力が必要な仕事 |
興味のあるジャンルを極める | スポーツ選手、税理士などプロフェッショナルな仕事 |
・具体的な指示があれば、コツコツと作業をこなせる
・本人が好きなことであれば、集中力は持続し易い
向いていない仕事
コミュニケーションが必要で、自分一人で完結しない仕事は向いていません。チーム一丸となって行う作業では、時に自分のこだわりを捨てなければならないからです。
上記に加え視覚過敏等の二次的障害が出てしまうと体調を崩してしまい、さらに周囲との溝ができるかもしれません。
注意欠如・多動症 (ADHD)の場合

注意欠如・多動症(ADHD)とは遺伝的要因だけでなく、脳内部でドーパミンが機能障害を起こしていると想定されています。自閉症スペクトラム(ASD) と合併する場合もあります。
注意欠如・多動症 (ADHD)の特性
- 準備を怠り、順序立てて活動できない
- 気が散りやすく集中できない
- 常に体を動かしていたいので、授業や人の話を聞くのが苦手
参考元:ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
以上のような特性が強く出るとミスが多くなったり、知らない間に負傷していたり、授業中に出歩いて周囲に迷惑をかけていたりなど、本人だけではなく周囲の人にも影響が出てしまいます。
向いている仕事
注意欠如・多動症 (ADHD)の人は「ミスが多く動き回っていないと気が済まない」のように、周囲に迷惑が掛かる影響が出てしまうかもしれません。それが原因で首になってしまったら悲しいですよね?
特性を欠点とみなされないためには、自分で裁量できる作業を増やす、ミスを挽回しやすい環境にいると長所として生かせるでしょう。
自分で決めた作業量をこなす | イラストレーター、プログラマー |
興味のある分野へ特に行動力がある | 個人事業主や経営者 |
自分で裁量でき、ミスを挽回しやすい | 営業 |
・エネルギッシュ
・興味ある分野への積極的に勉強できる
・賑やかな場所でも集中力を発揮できる
向いていない仕事
あちこちに興味が向いてしまい一点集中が苦手なので、一つの作業を延々に行うのは避けた方がいいでしょう。
どうしても一つの作業を続けなければならない場合は、気分転換できる雑務を間に挟める環境であれば、集中力継続が期待できるかもしれません。
学習障害(限局性学習症、LD)の場合

文字の読み書き、算数の計算など学習分野における発達障害の一つです。
学習障害(限局性学習症、LD)の特性
- 文字の読み書きや算数の計算を処理時に困難が生じる
- 全般的な知能の遅れは見られない
参考元:学習障害(限局性学習症) | e-ヘルスネット(厚生労働省)
以上の特性が強く出ると学業不振や仕事での成績不振が顕著に表れます。学習障害は自閉症スペクトラム(ASD) や注意欠如・多動症(ADHD) と合併する場合も考慮してください。
向いている仕事
文字の読み書きや数字の計算など一部分において学習障害が生じたとしても、補助機器を使えたり全体像を把握したりのような、マイナスを補助できる環境であれば特性を長所として生かせます。
成果物をイメージしやすい | ライター、コピーライター ※ただしメールを返信するなど目で見て分かる作業 |
分業制の仕事 | データ入力、コールセンター ※ただしメールを返信するなど目で見て分かる作業 |
・個性的な考えやひらめきがある
・苦手なもの(聞く・読む・書く・計算するなど)以外のものは困難さは示さない
向いていない仕事
補助道具を利用できない、わからない点を自力で解決しなければならないなどのように、自己負担の大きい仕事は向いていません。
ご自身のペースに合った仕事を探しましょう。
▼発達障害の特性について詳しく知りたい方は、別途記事を用意しておりますので併せてご覧ください。
仕事を選ぶ時に気を付けたいこと

発達障害の特性ごとに向いているまたは向いていない仕事があることはわかりました。
「LDの特性を持つ場合、補助道具を使用できれば健常人と同じ環境で働けるのでは?」と思う方もいるでしょう。
しかし発達障害者の働く環境は課題が残っています。本項では発達障害者が仕事選びで気を付けるポイントを紹介します。
▼下記の動画では発達障害者のYouTuberが発達障害者向けに仕事選びのポイントを紹介していますので、参考にしてみてください。
発達障害の働く環境は未整備である場合が多い
発達障害の種類に関わらず、“働く上であった方が良い環境”を挙げます。
- あらかじめ業務上の得意や不得意を伝え配慮してもらう
- 業務上の得意や不得意を配慮した配属にしてもらう
- 補助道具が利用できる環境作りに協力してもらう
しかし実際は、発達障害の人でも安心して仕事ができるような環境を提供する会社は多くありません。
職場の配慮や環境によるとことろも大きいのですが、環境を整えにはリソースや人手不足であるために、向いてる仕事に全員が就けるわけではありません。
環境が整っていない場合は、自分ができることとできないこと、できることのう何が困難なのかを普段から見極め、いざという時に自分から相談できる準備が必要です。
その為には、子供の頃からご家族やその他サポーター(主治医・発達相談窓口など)と共にお子さんの適職を探っていきましょう。
また、困った時の相談・お願いの仕方についても、日常生活の中で練習していくと自然に伝え方が身につき、社会人になった時に活きてきます。
相談窓口に頼る方法も
子供の頃から利用できる日常生活や学校生活での困りごとを相談できる窓口以外に、発達障害のある方が働く上での不安や困りごとを相談しサポートしてもらえるような場所をピックアップしました。
就労移行支援事業所
障害のある方の企業での就労に向けたサポートを受けられます。
主に得意を伸ばす・不得意をカバーする・仕事現場を想定したコミュニケーションのトレーニングなどを行なっています。
参考元:障害者福祉サービス事業所等-都道府県別リンク一覧 | 厚生労働省
ジョブコーチ
ジョブコーチとは、障害ある人と職場をつなぎながら、障害ある方に付き添って仕事に慣れるまで支援したり、職場と相談しながら双方が納得いく環境整備を担う役割を指します。
条件は職場との相談で変わりますが、職場内まで付き添ってもらえ、職場の環境を一緒に感じてもらった上でのサポートを受けられるので心強い存在だと言えます。
参考元:職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業について | 厚生労働省
発達障害デイケア/精神科青年期デイケア
発達障害デイケア/精神科青年期デイケアでは、医療機関に付属した施設で発達障害に特化、あるいは発達障害の方もサポートしてもらえるようなプログラムが組まれています。
1日もしくは半日の利用を継続的に行う中で、デイケアスタッフと共に得意・不得意を具体的にします。
それをどのように活かしていくかを集団活動の中で実践的に練習し振り返り、それを社会生活において活かせるのです。
デイケア参加を通じて就労支援への移行も可能です。
保護者が子供の特性をプラスに伸ばす為にできること

保護者が子供の特性をプラスに伸ばす為には、「子供さんの一番の支援者」になりましょう。
発達障害の特性について理解が浅いと、適切な処置が分からないまま事態が悪化してしまうからです。
そして発達障害の特性を知っていたとしても、実際様々な特性を目の当たりにすると、家族であっても理解に苦しむ場面もあります。
特性を理解したら次は言質を取ってみましょう。例えば「どうしてその行動をしたの?」と興味をもって聞き、お子さんの情報を集めます。
特性に関係した行動や言動には理由があるので、お子様の状況を確認することが、特性をプラスに伸ばすきっかけになります。
社会復帰事例:自閉症スペクトラム(ASD)傾向のお子様

子供の頃から、学校に馴染めず授業に参加することもままならず、勉強が全く興味をもてなかったAさんという方がいます。
生活リズムは完全な夜型だったことも、登校できなかった理由の一つでした。
病院に相談した結果、自閉症スペクトラム(ASD)の傾向があると言われたそうです。
Aさんが子供の頃は、現代のように発達障害の専門医や地域の相談窓口がなかったこともあり、Aさんのご両親が一番のサポーターでした。
一番のサポーターであるお母さんの悩み事は、Aさんが学校に行かず、勉強嫌いで、家に引きこもってしまった点です。
解決方法が見当たらず試行錯誤した結果「学校の勉強に興味がないのなら」とPCを買い与えたそうです。
Aさんは独学でPCを勉強し続け、大人になった現在もPCに熱中しPCを使った仕事に就いて約20年経過されています。
Aさんの親御さんのように、思い切った行動をとり、その子の特性を伸ばすきっかけが生まれる場合があります。
しかし実際はなかなか思い切れないもの。思い悩んだ時は、主治医・市町村区の発達相談窓口に「個性を伸ばす方法」について相談を検討してみましょう。
また、放課後デイサービスに相談するという手段もあります。
神奈川県横浜市にあるアップも、そんなサービスを提供する施設のうちの一つです。
アップでは一人ずつ特性に合った運動や学習療育を提供しています。学校やその他生活での不安などがある場合など、ぜひお気軽にお問合せください。
まとめ
発達障害の有無に関わらず子供の特性に応じた適職を早い時期から見定めるのは、容易ではありません。
しかし早い時期から発達障害の子供さんが、特性上での困りごとや特性を伸ばす方法などを相談できる場所はあります。
悩みや疑問を抱え込みそうになったら今回紹介した場所を検索、もしくは問い合わせをしてみてはいかがでしょうか?
最後までお読みいただき、ありがとうございました。