皆さんこんにちは!本日も発達障害等に関する学びや情報交換の場になることを願って投稿させて頂きます。
今日のトピックは「発達障害と味覚」についてです。
発達障害のある人の中には、「他の人と味覚が違うな」と思うことはありませんか?
今回は発達障害で見られる味覚の違いとその原因、対処法などをお話します。
目次
なぜ発達障害は味覚が違うことがあるのか?
突然ですが、苦手な食べ物はありますか?
甘いもの・辛いもの、酸味が強いもの、青臭い野菜、生肉やホルモン。
「くさや」や「臭豆腐」など独特の臭みがあるもの。
「食べ物の好き嫌いが全くない」という人は、少ないのではないでしょうか?
食べ物の好き嫌いは珍しいことではありませんが、発達障害の人の中には「極端に食べられるものが少ない」という人がいます。
偏食は単なるワガママと捉えらえることもありますが、発達障害の特性によって引き起こされている場合もあります。
このような違いはどうして見られるのか、その原因からお話していきましょう。
発達障害に併発する感覚の異常
発達障害とは、脳機能の発達がアンバランスで、その凸凹によって社会生活に困難が生じる障害の総称です。
行動や認知の特性により、主に「自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)」の3つに分類され、これらの特性を単独ではなく、複数持っている人も少なくありません。
また、発達障害では「感覚統合」に問題があり、感覚の受け取り方にも凸凹が見られることがあります。
五感(味覚・嗅覚・視覚・聴覚・触覚)に加え、固有感覚(身体に対する意識の知覚)・前庭感覚(身体の傾きやスピード、回転の知覚)を含めた7つの感覚を環境に合わせて受け取る調整ができる能力。
通常は発達とともに統合され、無意識に環境へ適応できるようになる。
通常の刺激でも敏感に受け取ってしまい、刺激を強く不快に感じる状態を「感覚過敏」、逆に刺激を受け取りづらく鈍感な状態を「感覚鈍麻」と言います。
味覚に関しても同様に「過敏」や「鈍麻」が見られることがあり、これが原因で味を強く不快に感じたり、逆に感じにくいことがあります。
様々な感覚異常と偏食の関係
感覚の異常は、ひとつの感覚だけでなく、複数の感覚に症状が見られることもあります。
特に食事は複数の感覚が関連しており、本人が「味が嫌い」と言っても、実際には触覚や嗅覚の影響が大きい場合もあります。
特に、まだ年齢が低かったり、発達障害で言葉で表現することが苦手な場合は、本当に味覚だけの問題なのか、全体像が掴みづらい場合があります。
例えば「ブロッコリーが嫌い」と言っても、それは「味が苦手(味覚過敏)」ではないかもしれません。
「つぶつぶとした触感が苦手(触覚過敏)」かもしれませんし、「匂いが苦手(嗅覚過敏)」かもしれません。
食事に関係する感覚の異常をまとめました。
【味覚】
- 辛味や甘味、酸味などを強く不快に感じてしまう。
- 逆に鈍感で、味を感じにくく、調味料を多量に使ってしまう。
【触覚】
- コロッケなどの揚げ物の衣が、口の中で刺さるように感じる。
- パンをパサパサしたスポンジのように感じてしまう。
- イチゴ種のザラザラとした触感を嫌う。
- キノコや豆のつるつるした表面をプラスチックのように感じ、吐き気を感じる。
【嗅覚】
- 野菜の青臭さや肉や魚の臭みを敏感に感じ取る。
【聴覚】
- 食べ物を噛む時の音(咀嚼音)を敏感に感じ、固いものなど咀嚼が必要な食材を避ける。
【視覚】
- イチゴの種やトウモロコシなど、表面に粒が集まった物を不快に感じる。
感覚以外の原因
感覚以外のの問題が、偏食の原因になることもあります。
元々感覚などの問題で苦手だったものを無理に食べさせられたり、強制されることでトラウマとなり、更に拒否が強くなる場合もあります。
また、「新しいものやよく分からない物は受け入れられない」という場合もあります。
拘りが強い傾向のお子さんにとっては「もう二度と食べたくない。不安なので、安心できる限られたものしか食べたくない。」と、更に偏食を強めてしまうこともあります。
味覚の異常によって起こる困り事
発達障害は、元々外から見えにくい障害です。
感覚異常など特有の感じ方も、なかなか周囲の人からは理解されづらく、「ワガママ」などとレッテルを貼られてしまうこともあるようです。
味覚に関して過敏や鈍麻がある場合、どのような困り事があるかまとめました。
- 偏食の一因になる。
- 栄養失調などで、成長が素材される。
- 塩分過多など、二次的に健康を害することがある。
- 料理が上手くできない。
- 食事が楽しめない。ストレスに感じる。
- 単なる「食べ物の好き嫌い」や「ワガママ」と受け取られることがある。
- 周囲の理解が得られず、不登校やうつ病など二次障害が生じることもある。
- 歯磨き粉やうがい薬が使えない。
また、本人だけの問題ではなく、調理法で悩むなど、親御さんにも大きな負担がかかることがあります。
「きちんとご飯を食べさせていますか?」
心配しての声掛けでしょうが、そんな言葉に傷ついてしまう親御さんもいるのではないでしょうか。
対処法
それでは、味覚異常などで偏食がある場合の対処法を見ていきましょう。
「苦手」を取り除く
発達障害のある人の中には、強い拘りや未経験のことに強い不安を感じる人もいます。
まずはそういった不安を取り除くことから考えてみましょう。
同じ食材であっても調理法を変えることで受け入れられる場合があります。
他の感覚障害にも言えることですが、感覚の特性で困っている場合の基本的な対処法は「原因を取り除く・避ける・許容範囲を徐々に広げる」です。
調理法を変える
例えば、「ハンバーグに牛乳を浸したパンが入っていると、べちゃっとした触感で苦手」というお子さんに、パンではなく麩を使ったら食べられるようになったという事例もあります。
お子さんの成長に伴い「何が苦手なのか」言葉で説明できるようになってくると、調理法のヒントになる情報が聞き出せるかもしれません。
- 辛さなどに敏感な場合、通常のレシピをお子さんに合わせてアレンジする。
- 揚げ物の衣の触感が苦手な場合、素揚げにしたり、揚げ物以外の調理法にする。
- 固いものが苦手な場合、ふやかしたりペースト状にしてみる。
安心して食べられるものだと学習させる
発達障害は、新しいものを受け入れるのが苦手で、順応するのも時間がかかることがあります。
新しい食材は、本人にとっては不安で、時には「食べ物ではない」と感じることもあるかもしれません。
一緒に調理をするなど、見て、触れて、経験させていくことも大切です。
- 絵本やイラスト、ままごとなどを通して、食べられる食材だということを示し、安心させる。
- 給食の献立を見せて、どんな食材が入っているか説明する。
- 一緒に献立を考えたり料理をして、食材や料理に興味を持つことから始める。
少しずつ許容範囲を広げる
無理に食べることを強要されると更に苦手意識が強くなったり、トラウマになり食事自体に拒否反応が出る可能性もあります。
定型発達のお子さんと同様に、成長と共に食べられるものが増えてきたり、好みが変わってくる場合もあります。
調理法などの工夫もしながら、焦らずに対応していきましょう。
発達障害は、「新しい物事が苦手、順応しにくい、こだわりが強い」などの特性が見られることがあります。
もともと味覚過敏などで食べ物に関して苦手意識がある場合、また不快な思いや不安を感じたくないので、「安心して食べられるもの」を数種類だけ決めて、それだけを繰り返し食べる様子も見られます。
本人が安心して食べられるものがあるならば、それを無理に変えようとせず、「いつものメニューに少しだけ野菜を入れる」など、少しずつ許容範囲を広げられるように支援していきましょう。
こだわりが強い場合、自分の決めたことを変えられることに、強い不安を感じることがあります。
類似した疾患
生活習慣や他の疾患によって、味覚に異常が現れることもあります。
風邪をひいて嗅覚も落ちていると、味覚を感じにくくなることがあります。
(嗅覚と味覚を統合して風味を味わうため)
風邪などであれば一時的なものなので問題ありませんが、中には慢性的な疾患の症状として現れていることもあります。
他の疾患の併発が疑われる際は、受診も検討しましょう。
味覚障害は歯科で対応できる場合もありますが、専門的な検査や治療は耳鼻科でも行っていることがあります。
また脳卒中など中枢神経の問題が考えられる場合は、脳神経外科が専門になります。
味覚の感覚以外が原因で、味覚に異常が現れるものは、以下を参考にしてください。
- 嗅覚低下に伴う味覚低下
- 口喝(口の乾き)による味覚低下
- 偏った食事などによる亜鉛不足
- 加齢による感覚器の機能低下
- 薬の副作用による味覚低下
- 貧血や糖尿病
- 脳卒中などによる神経の障害
など
まとめ
今回は発達障害に見られる味覚異常についてお話しました。
味覚異常により食べられるものが限られると、「好き嫌いが多い、ワガママ」など誤解されてしまう場合もあります。
普通の感じ方と違うからと、それを非難したり強要するのではなく、どのように感じているのかを知り、どのように工夫すればその困難が減るか、考えていきましょう。
児童発達支援と放課後デイサービス 運動・学習療育アップでは発達障害のある児童を対象に、デイサービス事業を行っています。
お子さんの成長や個性に合わせて様々なプログラムを実施しています。 生活の中の苦手や困りごとについても、お気軽に相談してください。