皆さんこんにちは!
本日も発達障害等に関する学びや情報交換の場所なることを願って投稿させて頂きます。
今日のトピックは「発達障害とIQの関係性」についてです。
元々IQは知的障害を評価する目的で作られた指標ですが、近年ではテレビ番組などで取り上げられるようになったため、聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
そして発達障害だけではなく知的障害でも色んな組み合わせがあり、例えばADHD・自閉症スペクトラム障害と合併している子供や、知的障害だけある子供など症状はさまざまです。
今回はIQの検査方法、検査方法に対する捉え方および発達障害の症状別解説をお届けします。
目次
IQを算出できる知能検査「WISC-Ⅳ(ウィスク・フォー)」
WISC-IV(ウィスク・フォー)とは児童向けウェクスラー式知能検査の略で、いわゆるIQが産出されます。
5歳0か月から16歳11か月の子供を対象とし、同年齢の子供と比較した場合、どの程度知能を持っているかを測定する検査となります。
何らかの発達障害を持つ子供は知的な発達に遅れを伴う可能性があり、知的な発達がどれくらいなのかを評価するためにWISC-IVがよく使われます。
WISC-IVを受けられる機関は?
全国の医療機関または公的機関で受けられます。
やみくもに連絡する前に、お近くの発達障害者支援センターでWISC-IVが受けられる機関を確認してみましょう。
参考元:発達障害者支援センター・一覧 | 発達障害情報・支援センター
知的障害におけるIQテストの捉え方
自分の子供がWISC-IVを受けて知的な発達の遅れがあると言われたら不安になりますよね?
しかしIQが低いから障害が重い、IQが高いから生活に問題が無い……など、数値だけで判断してはいけません。
医師はWISC-IVの結果だけで発達障害を診断や薬の処方は行いません。
実際は知能の発達と、どの項目が苦手かを判断するためWISC-IVを使用しますが、WISC-IVの結果に加え、行動の癖や特徴を組み合わせます。
WISC-IVの結果は現状抱えている問題をどのように解決していくか、援助や支援の仕方をどうするか考えるためのツールとして捉えるのが良いでしょう。
日本人向け知能検査は他にも:田中ビネー知能検査
WISC-IVは世界各国で使用される児童向けの知能検査ですが、他にもあるのでご紹介します。
一般財団法人田中教育研究所が手掛けた「田中ビネー知能検査 V(ファイブ)」といい、現代日本人の生活様式に合わせた検査法を取り入れています。主な検査項目は以下の通りです。
- 集中力
- 最後まで問題を取り組む能力
- 客観的な評価能力
これらを結果を用いて現在の年齢に合わせた問題点を明らかにし、具体的にどのように解決すればいいのかを確定するものです。
WISC-IVと異なり児童だけではなく成人にも対応しています。
田中ビネー知能検査を受けた方の感想にもある通り、結果に惑わされるのではなく「支援にどう生かすか」が大事であるとわかります。
WISC-IVにより判明する境界領域知能(グレーゾーン)
平均的、知的障害もしくは境界知能(グレーゾーン)であるかどうかをIQの数値によって定義しています。
IQの数値が判明すれば知的障害の程度や、生活が送りにくさを確認できるのです。
境界知能とは?
一般的に知的障害はIQ70以下、85~115の範囲が平均と言われています。
知的障害と平均の間にあるIQ70~85が境界知能(境界領域知能)で、明らかな知的障害とは言えません。
環境を選べば自立生活が送れる範囲ですが、状況によっては支援が必要な状態です。
「状況によっては」というのがミソで、自閉症スペクトラム障害なのかADHDなのか、また個性によっても支援が必要な場面は異なってきます。
以上からわかるように、必要な支援や状況を把握、対策を練るために知能検査があるのです。
参考元:なぜ何もかもうまくいかない? わたしは「境界知能」でした | NHK
WISC-IVのテスト項目から分かること
WISC-IVを受けると、子供の得意・不得意を客観的に確認できます。
知的障害のない子供は、WISC-Ⅳの結果が平均的な点数になり、発達障害の子供はWISC-IVの結果が全般的に低い、もしくは点数の差が大きく差が表れます。
WISC-IVの項目は?
以下の4項目から構成されます。
言語理解指標(VCI)
言葉に関するIQを測定する項目です。
知覚推理指標(PRI)
非言語的な思考や推理、空間的な認知や視覚と運動の協調性などを測定する項目です。
ワーキングメモリ指標(WMI)
情報を一時的に脳に保存する機能を測定する項目です。短期記憶に関わるところです。
処理速度指標(PSI)
視覚からの情報をどれだけ早く処理できるかを測定する項目です。
動作性IQと言語性IQ
動作性IQと言語性IQは、WISC-Ⅲの時の指標となります。
WISC-IVにおいて言語性IQは言語理解指標(VCI)に、動作性IQは知覚推理指標(PRI)へと名前を変えています。
WAIS-IV(ウェイス・フォー)との違い
WISC-IV(ウィスク・フォー)と似た名称のWAIS-IV(ウェイス・フォー)という知能検査があります。
WAIS-IVも知能検査で、主な違いは対象年齢や測定項目数です。
対象年齢が16歳0カ月~90歳11カ月、WISC-IVで測定する4項目の他に、全検査IQ(FSIQ)を合わせ合計5項目を測定します。
WISC-IVから分かる2つの特徴
WISC-IVでは発達障害の種類により典型的な特徴を示す場合があります。
WISCにおけるADHDの特徴
ADHDは不注意と多動・衝動性を主症状とする発達障害ですが、最近になってワーキングメモリとの関連が示されています。
ワーキングメモリは一時的に情報を記憶しておくための脳の機能です。
ADHDの症状が著しい子供は、ワーキングメモリが少ない傾向にあり、過去の情報や経験に基づいて状況を判断できません。
ワーキングメモリが少ないため、思い付きで衝動的に行動注意力散漫になりやすい傾向にあります。
ADHD全体でみると特別IQが高い訳では無いようですが、経験的には高IQの人たちの中にはADHDの特性を持つ子供もいっぱいいると言われています。
参考元:ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
WISCにおける自閉症スペクトラム障害の特徴
自閉症スペクトラム障害を抱える子供は処理速度指標(PSI)が低下しやすい反面、過集中ができる、論理的思考能力が高い傾向にあります。
興味の幅が限局している結果、自分の興味がある分野に関してはものすごい才能を発揮、社会に貢献している方がいるのです。
限定的に効果があるからこそ、特性から高IQになりやすいのかもしれませんね。
参考元:ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について | e-ヘルスネット(厚生労働省)
項目別知的障害の対応
言語理解指標(VCI)が低い場合
言葉がきちんと受け取る、指示を理解するといった相互確認が難しくなります。
対策は「絵で理解する」や「個別で対応する」などのように、言語での説明をなるべく少なくしてゆっくり伝えることが有効です。
知覚推理指標(PRI)が低い場合
視覚情報を整理するのが苦手なので、机の上を整理するとか、ロッカーを整理といった行為が難しくなります。
整理整頓が苦手な場合は、片付ける場所を「ラインテープで区切る」や「写真を活用する」をすれば、視覚情報が理解しやすくなり、効果的です。
ワーキングメモリ指標(WMI)が低い場合
記憶を一時的に脳にとどめておく行為が苦手なので、一度にたくさんの指示を聞き取る、板書するのが遅くなります。
ワーキングメモリが少ない場合は「口頭による指示は簡潔」や「口頭でなく視覚を用いて指示を理解してもらう」といった支援が功を奏する場合があります。
処理速度指標(PSI)が低い場合
限られた時間内に課題をこなしたり、素早く行動を起こす行為が苦手な状態です。
処理速度指標が低い場合は「アウトプット訓練」や「作業の時間配分を事前に決める」など、効率アップを目指すと脳内で処理できる助けになります。
参考図書
WISC知能検査の各項目を解説しており、事例も併せて紹介しています。検査を受けた方や、検査結果をより詳しく知りたい方にお勧めします。
まとめ
今回は発達障害とIQの関係性についてお話ししました。
- WISC-IVによるIQテストは、支援や援助に役立てるためのツール
- WISC-IVの測定項目は、言語・知覚・ワーキングメモリ・処理速度の4つ
- ADHDはワーキングメモリの低下の程度を確認可能
- 自閉症スペクトラム障害は処理速度の低下や過集中の程度を確認可能
WISC-IVの測定結果だけで人を判断せず、測定結果を活用してみてくださいね。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。みなさんの子育てに参考になれば幸いです。