皆さんこんにちは!本日も発達障害等に関する学びや情報交換の場所なることを願って投稿させて頂きます。
今日のトピックは「発達障害とテレビの関係性」についてです。
テレビは家族や友達とのコミュニケーションにおいて共通の話題を得るのに便利です。
しかし発達障害とテレビに何かしら関係性があるとしたらどうでしょうか。テレビとの付き合い方に悩んでしまいませんか?
今回は発達障害とテレビとの関係性、テレビと有意義に付き合う方法について紹介します。是非参考にしてみてくださいね。
目次
発達障害とテレビの関係性
発達障害とテレビの関係性は、平成16年に日本小児科学会の提言「乳幼児のテレビ・ビデオ長時間市長は危険です」によって話題となりました。
提言の中で小児科医や発達の専門家から乳幼児が長時間テレビを見ると言語(有意語)の出現の遅れる率が高くなるとの指摘されたのです。
参考元:乳幼児のテレビ・ビデオ長時間市長は危険です(PDF)
例えばお母さまを見て「ママ」と呼んだり、犬を見つけて「ワンちゃん」と発することです。
一般的に、対象の人や物を正しく認識して言葉にできれば、有意語が出現していると判定されます。
言葉の遅れはASDの症状を誘発?
言語の成長が滞ると、ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)の症状があらわれてくるかもしれません。
ASDは主に社会性コミュニケーションに対する障害です。言葉を正しく理解できず、対人関係を築くのが難しいといった症状が現れます。
お子さんが生きづらさを感じさせないようにするためにも、保護者の方もテレビとの付き合い方についてしっかり学ばなければなりません。
参考元:ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について|厚生労働省
▼ASDに関しては別途記事を設けております。興味のある方は参考にしてみてください。
発達障害の「テレビとの付き合い方」のポイント
本稿では、発達障害の特性にも考慮した「テレビとの付き合い方」についてお伝えします。
発達障害とは、脳機能の発達がアンバランスで、その凸凹によって社会生活に困難が生じる障害の総称。
行動や認知の特性により、主に自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)の3つに分類される。
これら3つの特性を単独ではなく、複数持っている人も少なくない。
発達障害のお子さんは、テレビやゲームに集中し過ぎて、他の活動に上手く切り替えられないこともあるようです。
お子さんが主体となりルールを決める
長時間テレビを見ていると、その他の活動時間が制限されてしまいます。
バランスよく様々な活動ができるように、一定のルールの枠組みを作りましょう。
その際親御さんがルールを決定するわけではない点に注意してください。
例えばお子さんの意見も聞いたり、お子さん自身が「テレビとの付き合い方」を振り返ったり、考えたりできるよう支援しましょう。
視聴時間と番組を決める
好きな時に自由にテレビを見ているお子さんにとっては、急に「見る時間を減らしなさい!」と言われても抵抗があるのではないでしょうか?
まずはお子さんが1日の中で「いつどのような姿勢でテレビを視聴しているのか」を観察してみてください。
- 帰ったらまずテレビを付ける
- 暇なので、何となく見ている
- 宿題など他のことをしていても、テレビは付けたまま
案外本当に見たい番組は少なく、「暇を持て余してテレビ画面を見ている」「何となくテレビを付けている」状況が多いのではないでしょうか?
まずは見たい番組を書き出し、勉強や外遊びなど他の時間も充分取れているか確認しましょう。
スケジュール全体を見直して他の活動も促す
発達障害のお子さんは、曖昧な表現や見通しの立たないことは苦手です。
そのため、「テレビを見る時間を減らしなさい」と言われても「何時間なら良いのか、代わりに何をしたら良いのか」分からないことがあります。
お子さんと視聴時間や番組を決めたら、代わりに何をするのか全体のスケジュールも考えましょう。
1週間単位でテレビを見る時間を調整する
見たい番組を書き出してみると、曜日によって見たい番組がたくさんあったり、1つもなかったり、偏りがあるのではないでしょうか。
1週間のうち観たい番組が偏っている場合は、1週間単位でテレビを見る時間を調整しましょう。
- 見たい番組が多い時は、録画して他の曜日に見る
- 雨の日は貯めていたビデオを見る
- 視聴時間が長い日があれば、他の日に外で遊ぶ時間を増やす
自分で見たい番組や時間を決め、それを日によって調整するのは、自己管理や自立の練習にも繋がります。
親御さんも一緒に「テレビとの付き合い方」を見直す
親御さんは、普段どのようにテレビを見ているでしょうか?
お子さんはその様子を見て、真似ることがあります。
お子さんに助言するとともに、普段のテレビとの付き合い方を見直してみましょう。
【見直した方がいい一例】
- テレビに近づき過ぎている
- 間食しながら寝転がって見ている
- 帰宅したら、とりあえずテレビを付ける
- 就寝や外出する直前までテレビを付けている
- 時計代わりに常時テレビを付けている
お子さんの発達に良い影響を与える番組を選ぶ
お子さんの好みや発達段階に合わせて、言葉の発達や社会性が身に着くテレビ番組を選びましょう。
- お子さんが理解できる言葉を使っている
- 仲間と協力したり助け合うことを学べる
- 嬉しい、悲しいなど、感情表現の仕方を学べる
- 挨拶や社会のルールなど、社会的スキルを学べる
- 自然や動物、科学、海外など、普段は身近に存在しない世界を知る
- ヒーローものなど、正義感が学べる
- 歴史の登場人物に感情移入して、興味を持って歴史が学べる
- ニュースなどで時事問題に興味を持つ
- スポーツなど
長時間の番組は途中で区切る
だらだらと長時間見ていては、良い番組を選定しても、あまり良い効果は望めません。
録画も利用し、30分で区切って一旦会話する機会を作るなど、メリハリを付けましょう。
その会話の中で「対話的共有視聴」の方法も使い、お子さんの言葉や思考を引き出す質問を用意してください。
感覚過敏への対応
発達障害のお子さんの中には感覚の受け取り方にも凸凹が見られ、感覚を敏感に受け取ってしまうことを「感覚過敏」と言います。
発達障害では視覚や聴覚に過敏性を持っているお子さんも多く、テレビの音や光・色彩などを不快に感じることがあります。
また本人に自覚が無くても、テレビの音や色彩、光などがストレスとなり、不眠などの影響が出ることもあります。過敏性があるお子さんは、特に強い刺激に注意しましょう。
本人の意思でテレビを見ないのであれば無理に見せる必要はありませんが、「見たいけど見られない」という状態であれば、対処法を考えましょう。
【聴覚過敏への対応】
- 音量をミュートにして字幕で見ることから始める
- 少しずつ音量を上げ、本人が不快に感じない音量を探る
- 激しいアクション映画などを避け、刺激が少ないものから視聴する
【視覚過敏への対応】
- テレビの画面設定で、明るさや色彩を落とす
- 暗い部屋ではテレビの光を強く感じるので、適度な明るさで見る
- テレビに近づきすぎない
- 色彩や光の刺激が少ないものから視聴する
▼聴覚過敏については下記の記事も参考にしてくださいね。
語彙力が増える?!「対話的共有視聴」の方法
子どもにテレビを効果的に見せるための研究の中で、「対話的共有視聴」が注目されているようです。
対話的共有視聴とは
子どもとテレビを一緒に見て、それを会話の道具として活用する手法です。
絵本の読み聞かせなどと同様に、幼児の語彙量を増やす効果があると言われています。
お茶の水女子大学の菅原ますみ教授によると、お子さんと一緒にテレビを見る大人が、お子さんに質問などすることで、内容の理解や言葉の獲得を促す可能性があるとのことです。
【学術的な裏付けなどについて】(菅原ますみ委員)
(前略)「テレビは子どもにとってよくないもの」とすることは、よいコンテンツにアクセスする機会を子どもから奪うことになり、子どもにとっても不利益なのではないか、またニューメディアに対するスキルトレーニングからも遠ざけられることにつながるのではないか、と個人的には危惧している。
(中略)
まず、子どもに見せるコンテンツは年齢にふさわしい教育的で良質なコンテンツであることが重要だということ。また、テレビの視聴時間が就学前の発達に及ぼす大きな負の影響性は今のところ認められていないということ。一緒に視聴する大人が、オープンエンドな質問をするなど共有視聴することで、子どもの内容理解や語彙獲得を促す効果を得られる可能性があることも分かっている。(後略)
引用:青少年委員会 意見交換会 2017年6月30日(放送理論・番組向上機構)
対話的共有視聴の方法
絵本は集中して読むことで、お子さんに強い影響力を与え、保護者の方が「なんでかな?」など質問することで、お子さんの考える力を育てます。
テレビは絵本のように自分で読んだりページをめくらなくても、時間の経過とともに次々と映像と音が流れるため、絵本よりも受動的と言えます。
お子さんはのまだ知識や経験が不足しているため、大人と同じ情報を与えられても、そこから同じように学べるとは限りません。
そのため、大人がお子さんと一緒にテレビを見て、言葉や思考を促す声掛けが必要なのです。
質問形式で対話すると、よりたくさんの言葉を覚えたり、話の理解が進むようです。
- ○○ちゃんは、どんな気持ちかな?
- なんで泣いたのかな?何が悲しかったのかな?
- どこにあるのかな?
- なんでこうなったのかな?
- これからどうなると思う?
など
しかし、親御さんがずっと付き添うことは難しいと思います。
子供のテレビ視聴についての世論
テレビが原因で発達障害になるわけではないとしても、子どものテレビ視聴については、国内外関わらず「テレビ番組の内容」と「視聴時間」という2つの観点から様々な研究が行われています。
世論を見てみると肯定的な意見と否定的な意見が混在しており、はっきりとした結論は出ていないようです。
本稿では参考になりそうな情報を挙げてみました。テレビとの有意義な付き合い方を考える参考になれば幸いです。
子どものテレビ視聴を懸念する意見
テレビ視聴について否定的な意見の多くは、テレビを見ることで他の活動時間が減ること、家族の会話が減ることを懸念するものが多いようです。
視聴する年齢について
「乳幼児のテレビ・ビデオ長時間市長は危険です」に続いて、日本小児科学会がテレビの悪影響を懸念して、小さなお子さんに向けて5つの提言を公表しました。
5つの提言
1.2歳までのテレビ・ビデオ視聴は控えましょう。
2.授乳中、食事中のテレビ・ビデオ視聴はやめましょう。
3.すべてのメディアへ接触する総時間を制限することが重要です。1日2時間までを目安と考えます。テレビゲームは1日30分までを目安と考えます。
4.子どお部屋にはテレビ・ビデオ、パーソナルコンピューターを置かないようにしましょう。
5.保護者と子どもでメディアを上手に利用するルールを作りましょう。
引用:5つの提言(公益社団法人 日本小児科医)
2歳までと定義しているのは、幼い頃は保護者や周囲の人と言葉だけではなく表情も組み合わせることで、コミュニケーションを学習します。
お子さんが笑ったり触ったりすることで、周りの人がどう反応するか?幼い子供は反応を得ながら相互のやり取りを学ぶので、一方通行のテレビとは異なる学びがあるのです。
視聴時間について
日本小児科学会では、子どもテレビ視聴時間は「1日2時間以内が目安」ということです。多少の増加は許容されているようです。
テレビだけでなく、「スマートフォンなどメディアを使う時間の合計で2時間」ということです。
~総接触時間「2時間以内(目安)」について~ 子どもとメディア委員会より
一日は24時間です。子どもの生活時間の中で、睡眠時間、食事の時間、園や学校で過ごす時間、友達をおしゃべりや遊ぶ時間などをひくと2時間が限度であろうというのが提言の根拠になっています。
(中略)
子どもの年齢がいくつなのか、どのような生活をしているのか、そのときの社会状況(オリンピックの中継やサッカーの世界大会など行われていれば2時間以内は守れないかも知れませんがそれはそれでいいのです)基本的に「2時間以内」を「目安」として 生活の中に取り入れて欲しいと思います。
引用:こどもとスマホ(公益社団法人 日本小児科医)
前述したように、2歳までのテレビ視聴時間が長いと言葉の発達が遅れるという研究結果があります。
しかし、外遊びや絵本の読み聞かせをするとその相関が減少する。
外遊び等の頻度の方が重要との報告もあります。(参考:乳児期の心身の発達とメディア接触 お茶の水女子大学 菅原 ますみ 教授 )
「テレビを見ること=言葉の発達が遅れる」ではなく、テレビを見ることで他の活動をする時間が減ること。
それにより、友達との外遊びやご家族との会話の時間が減ることが問題のようです。
子どものテレビ視聴を肯定する意見
肯定的な意見では、前述した対話的共有視聴のように「どのように見るか、内容についてどう話すか」に注目したものが多いようです。
- どのような環境でテレビを見ているか?
- どのような内容のテレビを見ているか?
- 周りの大人がその子供にどのように関わっていたか?
テレビの内容によっては、様々な言葉や社会的スキルが身に着いたという声もあるようです。
- 言葉を覚えた
- テレビの真似をして、仲間と助け合うになった
- 挨拶など社会的スキルが身に着いた
- 「嬉しい」などの言葉で感情を表現できるようになった
下記のツイートのように、好きなキャラクターの真似をして好ましい行動ができたり、時事問題にも関心が出たという話もあります。
単にテレビを見せたら良いという訳ではありません。
前述したように親御さんがお子さんとテレビの内容について話など、会話や思考を促すことで、子どもの言葉の発達に良い影響があるようです。
まとめ
- 言語の遅れを制するために2歳までは長時間のテレビ視聴を避けよう
- テレビの見過ぎにならないようメリハリをつけよう
- テレビの「対話的共有視聴」は親子一緒に見てテレビの内容を会話のきっかけにするもの
- テレビ視聴には否定的な意見も肯定的な意見もある
今回はお子さんの発達のために、テレビを有意義に使うポイントをお伝えしました。
子どものテレビ視聴については賛否両論あると思います。
テレビ視聴のメリット・デメリットも知ったうえで、お子さんの成長を促す1つのツールとして活用できればと思います。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。