皆さんこんにちは!本日も発達障害等に関する学びや情報交換の場所なることを願って投稿させて頂きます。

今日のトピックは「発達障害に見られるルーティン」についてです。

ルーティンとは、型にはまった決まりきった行動をすることです。
発達障害のお子さんで、こだわりが強く、独自の行動パターンが変更できなくて困ることはありませんか?

普段の生活でさえスケジュールへのこだわりが強いのに、昨今では感染による休校もあり、いつもと違う状況に戸惑っているお子さんも多いのではないでしょうか?

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青木
普段はルーティンのおかげで朝の支度ができていますが、休校だと普段のルーティンができず混乱。こんな様子では、災害時など更に特別な場合はどうなるのか心配です。
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大竹
「ルーティンへのこだわり」は、作業の助けにもなり、不自由の原因にもなる。今回は普段からできる対処法と活用法、災害時など特別な場合にも役立つ方法を紹介します。

目次

「ルーティンへのこだわり」のメリットとデメリット

おもちゃを永遠と並べるなど、独自の遊び方をする。
終わりがなく、達成感もない様子。
手伝おうとすると怒りだす。

発達障害のお子さんの中には、遊びや生活の中で独自のルーティンにこだわる様子が見られることがあります。本人もその遊び方を楽しんでいれば良いのですが、必ずしも楽しんでおらず、時には不自由な様子も見られます。

なぜルーティンにこだわるのか理解するために、発達障害の各々の特性を整理してみましょう。

発達障害の特性

発達障害とは

発達障害とは、脳機能の発達がアンバランスで、その凸凹によって社会生活に困難が生じる障害。行動や認知の特性により、主に自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)の3つに分類される。

自閉症スペクトラム障害(ASD)

特性
・特定のものごとやルールへのこだわりが強い。
・客観的に作業の段取りを考えたり、優先順序を決めることが困難。
・好き嫌いが極端で、自分の興味や作業ペースを維持することを優先する。

注意欠陥・多動性障害(ADHD)

特性
・衝動性が強く、目に付いたところから作業を進めてしまう。
・やるべきことを忘れてしまったり、後回しにする傾向がある。

学習障害(LD)

特性
・知的発達に遅れがないのに、読む・書く・聞くなど、特定の学習への困難さが見られる。

その他

発達障害は主に上記の3つのタイプに分けられますが、各々の特性を単独ではなく、複数持っている人も少なくありません。また、脳の器質的な違いにより感覚の受け取り方が通常と違い、感覚統合に問題がある場合もあります。

感覚統合とは

五感(味覚・嗅覚・視覚・聴覚・触覚)に加え、固有感覚(身体に対する意識の知覚)・前庭感覚(身体の傾きやスピード、回転の知覚)を含めた7つの感覚を環境に合わせて受け取る調整ができる能力。
通常は発達とともに統合され、無意識に環境へ適応できるようになる。

刺激を敏感に受け取ってしまう状態を「感覚過敏」、逆に刺激に対して鈍感な状態を「感覚鈍麻」と言います。発達障害における感覚の凸凹では、感覚過敏を伴う報告が多いようです。

感覚過敏の特徴
・同じ衣類ばかり着る(触覚過敏)
・同じものばかり食べる(味覚過敏)

感覚鈍麻の特徴

・季節に合わせて衣類が変更できない(温度に鈍感)

同じ「こだわり」に見えても要因は各々違う

見えている行動は同じでも、お子さんによって要因が違うことがあります。他の場面で見られている特徴と照らし合わせて、何が本当の要因か考えてみましょう。

見えている行動:
どんな天候でもバスでの通学を嫌がり、徒歩通学にこだわる。

要因:
バスなどは酔いやすく、乗り物が苦手(平衡感覚の問題)
バスのアナウンスの音、人の話し声が苦手(聴覚過敏)
人が多いこと、人の目線などが苦手(対人関係が苦手など二次的な問題)

要因を特定することに固持する必要はありませんが、要因が分かることで理解につながり、「その要因を取り除く」など、対処法を考える助けになります

苦手を克服することばかりにエネルギーを使わず、得意なことや強みを活かす方法に支援することも考えましょう。

一般的なルーティンのメリット

仕事でも定形的な業務という意味で「ルーティンワーク」という言葉を使うことがあります。
ルーティンには以下のようなメリットがあります。

業務の効率化

作業の手順が決まっているので、次に何をするか考える必要がなく、スムーズに次の作業に移ることができる。
作業量・作業時間の予測がしやすく、スケジュール管理がしやすい。

目の前の仕事に集中できる

定形化しており、決められた手順を実行するだけなので、目の前の作業に集中して取り組むことができる。

家事でも「いつも決まった店で決まった物を買う、朝食はパンとコーヒーなど決まったメニューにしている」など、手順を決めて効率化を図っていることも多いのではないでしょうか。

このようなルーティンは、考える時間を節約し、効率よく作業するための助けになります。

私たちも、ルーティンを活用して作業効率を上げています。
発達障害に見られるルーティンも、お子さんが習得したスキル、1つの適応した形ではないでしょうか。

発達障害におけるルーティンのメリット

発達障害においても、上記の一般的なルーティンと同様のメリットがありますが、発達障害独自のメリットも考えられます。

見通しが立つことで安心する

発達障害では見通しの立たないことが苦手だったり、作業に必要な時間・労力などを見積もることが苦手なお子さんもいます。いつものルーティンであれば、安心して取り組むことができます

ルーティンならスムーズに作業できる

遂行機能障害があり、作業手順をうまく決められないお子さんもいます。ルーティンで手順が決まっている作業なら、スムーズに行うことができます

遂行機能とは

ある目的を達成するために、計画を立て、実行する能力。一連の行為を段取り良く順序立て、手際よく行うことができる。

一度決めたルールはやり遂げる

こだわりの強さは、難しいことも手を抜かずに最後までやり抜く強みにもなります。
ASDの人は集中力が高く、他の方が苦手なルーティンワークや緻密性を要する作業が得意なことがあります。

訓練としても活用できる

状況を見ながら自分でどう行動するか判断が難しい場合も、決められたルールに沿えば、状況に合わせた適切な行動をすることができます

家を出る時は「行ってきます」、帰った時は「ただいま」。
帰ってきたら、手を洗って、お弁当やプリントを出す。
お友達のおもちゃを借りたい時は、借りても良いか了承を得てからにする。

発達障害におけるルーティンのデメリット

状況に応じて変更できない

私たちは、ルーティンをその時々の状況に合わせて段取りを変えたり、柔軟に変更しています。

発達障害では、この柔軟に変更するなど臨機応変な対応は困難です。また、新しいことや見通しの立たないことへの不安も強いため、ルーティンの変更は難しいことが多いようです。

そのため、不自由なのに続けてしまい、本人がコントロールできずルーティンに振り回されてしまいます

自信と信頼を築く経験が不足する

私たちは、予定変更の必要性が出た時、焦りや心配もありながら状況をみて作業を中断・変更し、時には他者を頼ります。
この経験が、自信や他者への信頼につながります。

しかし、発達障害ではルーティンにこだわるため、これらの経験が不足するかもしれません。

いつものルーティンとは違うこともでき、時には他者に頼ることができる。
この自信と信頼により、また新しことに対処できる。

この好循環ができるよう支援することが望まれます。

ルーティンの「メリットの活用法」と「デメリットへの対処法」

ルーティンを活用する具体例

順序よく作業を進めることが難しい場合、1つずつ指示する方法もありますが、自立に向けた支援も検討してみましょう。ルーティンを活用することで、自ら手順を確認しながら作業できるよう支援できます。

発達障害では、「こうしなさい」「これはダメ」と、指示されたり否定される経験が多い場合があります。自分でできるという自信をつけたり、できたことで褒められる経験を増やしていきましょう

ADHDの当事者が作ったアプリ「ルーチンタイマー」

作業途中で注意がそれて、別のことをしてしまったり、手順が分からなくなってしまったり。そんな特性に効果的なのは、「時間ごとにやるべきことを声掛けしてもらうこと」です。

このアプリは、朝の支度などいつものルーティンの順序と各作業時間を登録することで、完了まで音声でアナウンスしてくれます

やるべきことの順序だけでなく、途中で「あと5分です」などの声掛けする機能があるので、注意がそれることを防止したり、作業が脱線していても修正することが可能です。

スケジュールボード

手帳を活用できたら良いのですが、手帳やメモ紙のことを忘れてしまったり、無くしてしまうこともあります。その場合は据え置きのスケジュールボートを活用してみましょう。

上から順に作業をする場合も、今どの作業をするのか分からなくなることもあるので、1つの作業が終わったらボードからカードを剥がすなど、工夫を考えます。

こちらの動画では、かなり手順の多い入浴準備を、作業項目の書かれたカードを張り替えながら行っています。

タスクカード

スケジュールボードでは情報量が多く、どこを見てよいか分からないお子さんもいます。日めくりカレンダーのように、1枚ずつカードをめくりながら行う方法も考えてみましょう。

こちらの動画では、カードをめくりながら掃除機をかけています。

不自由な「ルーティンへのこだわり」への対処法

予定変更する時・運動会など普段と違うスケジュールの時

予定が狂うこともあること、別の選択肢もあること、予定変更になっても大丈夫なことを伝えておきます。
できるだけ事前に伝え、変更する手順なども視覚的に伝えます

同じ遊びばかりする・同じ番組ばかり見る

感覚刺激やその遊び自体を楽しんでいれば良いのですが、時には「他の遊び方が分からないから続けている」ということもあります。永遠とおもちゃを並べたり、終わりがなく達成感も得られない場合もあります。

やめさせるのではなく、興味・関心を他へ広げるよう支援しましょう。
その際も、急に中止したり変更するのではなく、事前に予告しておきます。

共同作業など「まわりに影響があるもの」の場合

共同作業や集団行動では、作業の目的や、周りの希望も踏まえ、折り合いをつけるポイントを決めます

「一人で完結するもの」の場合

「一人で完結するもの」の場合、必ずしも急いで変更する必要はないかもしれません。感覚刺激を楽しんでいたり、自分なりのペースやコンディションを整えるのに役立つ場合もあります。

しかし、一人で同じ遊びばかりしていては興味・関心が狭小化し、他者と関係を作る経験も得られません。一緒に同じ遊びをしたり、他にも関心を広げられるよう支援します

その他

こだわりには本人なりの理由があるので否定せず、できる範囲でこだわりを保障しましょう。

また「やめたいのに、やめられない」といった強迫性障害などの併発が考えられる場合は、精神科などの専門医に相談しましょう。

強迫性障害とは

自分の意思に反してある考えが頭に浮かんで離れず(強迫観念)、その強迫観念で生まれた不安を振り払おうと何度も同じ行動を繰り返してしまうこと(強迫行為)で、日常生活に影響が出てしまう状態。
手が汚れている気がして何度も洗う、鍵を閉めていない気がして何度も確認するなど。トイレのたびに着替える、洗髪や洗体を5回ずつ行うなど、独自の行動パターンが見られることがあります。

休校・災害など特別な時の対処法

ルーティンによって日々の安心を保っているお子さんにとって、非日常的な場面では不安が大きくなることがあります。

昨今では感染拡大による休校などで、自宅待機をしているお子さんも多いと思われます。いつもと違う予測できない状況に、戸惑っているお子さんも多いのではないでしょうか。

いつものルーティンを利用することで安心させる

できる範囲で「いつもとおなじこと」をする

起床・食事・入浴・就寝など、できるだけ普段通りの時間に行い、お子さんの普段の習慣もできるだ普段通り行います。
ご家族も普段の習慣(ゴミ出し、植物の水やりなど)を、目の前で行うと安心します。

休校になると、ご家族も含めてつい起床時間が遅くなったり、生活リズムが崩れることもあると思いますが、できる範囲で普段と同じ生活をしましょう。
そうすることで、学校が再開した際もスムーズに元のスケジュールに移行できます

「安心できるもの」を身近に用意しておく

お子さんが好むものを活用します。 触覚や聴覚など、好む感覚を把握しておくと、もしも「いつもの物」がなくても代用品を考える助けになります

手触りの良いぬいぐるみ・毛布(触覚)、落ち着く音楽・音(聴覚)、ロッキングチェア(前庭感覚)、マッサージチェア・ぎゅっと抱きしめられること(固有感覚)など。

「安心できる人」とつながる手段を用意しておく

ご両親は仕事でも、お子さんだけ休校で自宅待機になる場合や、慣れない所に預けられて落ち着かない場合もあると思います。いつもと違う長時間の留守番や、慣れない場所での滞在になり、不安を感じるお子さんもいるかもしれません。

パソコン・スマートフォンのビデオ通話、見守りカメラなどを活用します。
仕事など時間の都合で直接会話ができない場合は、メッセージや動画をメールで送ります。通信手段がない場合は、写真なども検討しましょう。

有り余ったエネルギーを活用する

学校は休校、遊び場だった施設も休館。なにかと外出や活動を制限されることが多いと思います。普段からじっとしていることが苦手なお子さんは、 エネルギーを持て余しているのではないでしょうか。

身体を大きく動かす機会が少ないとストレス発散しにくく、感覚刺激も少なくなります。ストレスや感覚探索の結果として、自傷行為が増えることも考えられます。

禁止するばかりではなく、「やっても良いこと」「やっても良い場所・時間帯」や、体を動かす活動も提案してみましょう。お子さんの好む活動や感覚入力、年齢や体力に合わせた活動を考えてみましょう。

古新聞を敷いた上なら、自由にお絵かきをしても良い。自宅でできるストレッチや体操をする。掃除や庭仕事、DYI、粗大ゴミの解体、車の洗車などを手伝ってもらう。

有り余ったエネルギーを、家事の手伝いやDYIなどの創作に活用できることで、自信にも繋がります。

まとめ

今回は、「ルーティンへのこだわり」のメリットとデメリットを踏まえながら、メリットを活用する方法と、デメリットへの対処法を考えてみました。

「ルーティンへのこだわり」は、苦手を補うため本人が獲得したスキルでもあり、不自由の原因にもなります。状況に合わせてコントロールできれば、本人の強みを発揮できる味方になります。

急な休校など普段と違う状況においても、お子さんの特性や普段のルーティンを理解することで、落ち着いて過ごす方法を考える助けになります。

児童発達支援と放課後デイサービス 運動・学習療育アップでは発達障害のある児童を対象に、デイサービス事業を行っています。

学びや活動の場として、また保護者の休息や相談できる場として、一緒に成長を促すお手伝いを考えていけたら幸いです。