スプーンやお箸などの食具を使うには、手の操作の発達が不可欠です。
手の操作が巧妙になればなるほど、スプーンやお箸など複雑な動きが求められる食具の取り扱いも上手になります。

つまり、子どもにとってお箸やスプーンを使った食事が難しいように見える場合、手の操作がまだ追いついていないと考えられます。
手の操作の発達に見合わない食具を使っても、うまく食事することはできません。

そこで、食具の操作における発達の段階をまとめます。

手づかみからスプーンへの移行

子どもの発達段階は、手で直接操作をすることから始まり、徐々に「道具を介して物を操作する」遊びに移行していきます。
砂場での遊び一つとっても、「手で砂を触って楽しい」という段階から、「スコップを使って土を掘るのが楽しい」という段階に発展するものです。

この段階を無視してスプーンを無理に持たせようとするのではなく、まずは手づかみで食べることを許容して、手の操作になれさせるというのも一つの方法です。
食事以外の場面でも、なるべく手を使った遊びをさせることで、より手の操作に慣れてもらうと良いでしょう。

早くスプーンを持てるようになってほしいと焦ってしまうと、かえって遠回りな結果を招く恐れがあります。
日常生活の中でなるべく多く最初のステップである「手の操作」に慣れるための機会を作りましょう。

スプーンからお箸への移行

スプーンからお箸への移行においては、手の分離運動、別名3対2の法則が必要不可欠です。
細かい操作を行うとき、手の操作は主に3対2に役割分担されることとなります。

この3対2とは、「親指・人差し指・中指」の三本と「薬指・小指」の二本に分かれることを指します。
ペンを使って文字を書くときや自販機にお金を投入するとき、主に動かすのは「親指・人差し指・中指」で「薬指・小指」は支えに使うものです。

この3対2の役割分担を上手に行うことによって、手で操作できるものの幅は広がります。

発達の順番では、支えに使う方の薬指と小指の安定が先で、動きに使う親指と人差し指と中指はその後です。
支えに使う薬指と小指の安定は、ハイハイや手押し車、ジャングルジムなどを通して育まれるものです。

動きに使う親指と人差し指と中指は、支えに使う指の安定があるからこそ自由に動かせるようになります。
薬指と小指が安定しない状態では、全ての指で無理やり安定感を保とうとするしかなくなるため、スプーンをうまく持てず握ることしかできません。

そこで、まずは薬指と小指の安定感を育むことに焦点を当てるべきでしょう。
ダイナミックに手を使う遊びをしながら、この支えの指の安定感を持たせます。

次に、コイン入れやブロック、粘土などの細かい遊びをしながら、「親指・人差し指・中指」の動きを育みます。

道具を操作できるようになるには、無理に練習を重ねるのではなく、各々の指を安定させることが大切です。
手を使った遊びを生活の中に取り入れましょう。