今日のトピックは「発達障害と指しゃぶり」についてです。
指しゃぶりは定型発達のお子さんでも見られるものですが、成長とともに徐々に減っていきます。
しかし、発達障害では指しゃぶりなどの癖が遅くまで残ることがあるようです。
目次
なぜ指しゃぶりをやめないのか?
発達障害とは
発達障害とは、脳機能の発達がアンバランスで、その凸凹によって社会生活に困難が生じる障害の総称。行動や認知の特性により、主に自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)の3つに分類される。
これら3つの特性を単独ではなく、複数持っている人も少なくありません。
また脳の器質的な違いにより、感覚の受け取り方が通常の人と違っている場合もあります。
五感(味覚・嗅覚・視覚・聴覚・触覚)に加え、固有感覚(身体に対する意識の知覚)・前庭感覚(身体の傾きやスピード、回転の知覚)を含めた7つの感覚を環境に合わせて受け取る調整ができる能力。
通常は発達とともに統合され、無意識に環境へ適応できるようになる。
発達障害に見られる感覚の凸凹では、刺激に敏感な「感覚過敏」や、刺激に鈍感な「感覚鈍麻」などが見られます。
感覚過敏があると、その刺激を不快に感じ、避けることがあります。
逆に感覚鈍麻では、その刺激を求める感覚探索行動が見られることがあるようです。
定型発達の指しゃぶり
定型発達でも見られる指しゃぶりの要因は、以下の通りです。
- 手持ち無沙汰で遊んでいる
- お腹がすいた、寂しい、不安な時など
- 吸啜反射(口に入った物を吸う反射、母乳を吸う助けになる)
- 指を吸う感覚を楽しんでいる(感覚探索)
など
定型発達のお子さんも、口腔内を指で触る感覚(触覚)や自分の指が吸われる感覚(固有感覚)を体験することで、感覚探索しています。
感覚は脳の成長に欠かせないものなので、感覚探索は定型発達のお子さんでも成長の過程で見られるものです。
指しゃぶりは生後間もなくから3ヶ月頃にはじめることが多く、やめる時期はかなり個人差がありますが、3歳までにやめることが多いようです。
保育園や幼稚園など生活の中で社会性を身に付け人目を気にするようになったり、 成長とともに手を使う活動が増えていくことで、 自然と指しゃぶりをしなくなっていきます。
発達障害の指しゃぶり
発達障害で見られる指しゃぶりでは、以下のような要因が考えられます。
感覚鈍麻の影響
発達障害で感覚鈍麻があると、その感覚を求める行動をすることがあります。
口腔内を触る触覚や、吸われる指の固有感覚を求めているのかもしれません。
周囲の状況に関心が薄い
興味や関心が狭いため、何もすることがなく、 手持ち無沙汰で行っている場合もあります。 意識せず何となく行っており、本人も気づいていないこともあります。
不安や緊張
不安を感じやすかったり緊張しやすいお子さんは、安心できる行動として指しゃぶりをしている場合があります。
指しゃぶりを続ける悪影響は?
指しゃぶりを続ける悪影響は、以下のようなものがあります
- 上顎前突、出っ歯(上顎や前歯が前方に出る)
- 開咬(前歯の上下の間に隙間が空く)
- 歯並びが悪いことで発音が悪くなる
- 口呼吸が多くなる
- クチャクチャと音を立てて食べるようになる
- 指ダコができる
- 感染や衛生面の問題
など
成長とともに力が強くなり、歯も生え変わっていくため、4歳以降の指しゃぶりは歯並びや噛み合わせに悪影響を及ぼすことがあります。
噛み合わせが悪いと、発音や食事にも影響が出ます。
感染流行時は、感染のリスクも高まるため注意が必要です。
代替手段
指しゃぶりが誘発される状況を把握し、代わりの行動を提示する
「緊張や不安がある時」「手持ち無沙汰な時」など、どのような時に指しゃぶりをしたくなるか把握しましょう。
そして、ただ止めるように言うのではなく「やりたくなったらポケットに手を入れる、両手をぎゅっと握る」など、代わりに何をしたらよいか具体的に伝えます。
指しゃぶりの代わりに、下記のように楽しめる活動を提案することも考えましょう。
手を使う遊びや触感が楽しい遊びを行う
手持ち無沙汰だったり、指しゃぶりの感覚を楽しんでいる場合は、似たような感覚を得られる遊びを提案してみましょう。
粘土やスライム、練り消し、ゴムボールなど。
お子さんが好む感覚や遊びに合わせて選びましょう。
口を使う遊びを行う
シャボン玉、ラッパなどの楽器、 巻き笛、風船など。
話したり、歌ったりすることでも、指しゃぶりを防ぐことができるかもしれません。
年齢や状況に合わせて変える
指しゃぶりは、感覚探索や不安の軽減などの結果であることもあります。
前述した口や手を使った遊びや、他に興味・関心を広げるとともに、どうしても止められない場合は 、お子さんの年齢に合わせて、周囲にも受け入れられるものを探してみましょう。
例えば指からハンカチなどに変えることで、吸いだこや怪我を防ぐことにもなります。
しかし、いづれにしても「我慢させる」ことを重視するのではなく、興味や関心を広げて他の建設系な習慣に移行させていくことが大切です。
良い行動を習慣化する方法
行動療法
行動療法とは、 良い行動を習慣づけたり、好ましくない行動を減らすように行動変容させる方法です。指しゃぶりなどの好ましくない行動を抑制するためにも役立ちます。
発達障害のお子さんには、分かりやすい明確なルールを提示しましょう。
例えば、「買い物でお店にいる時間は我慢する」など、期間も明確にします。
そして「我慢できたらゲームを30分できる、お菓子をもらえる」など、ご褒美になる条件を提示しましょう。
こちらの動画では、お手伝いシールを貯めることでご褒美がもらえる工夫をしています。 適切な行動を継続する方法として参考にしてください。
どうしてもやめられない場合
妥協点を探す
努力しても、どうしてもやめられないことがあるかもしれません。
あまり強く禁止するとかえってストレスになり、指しゃぶりが増えることも考えられます。
その場合は、はじめから完全にやめることを目標とせず、段階的に社会に容認される形へ目標を設定していきましょう。
「お店にいる間は我慢して、車に乗ったらやっても良い」など、「いつ、どういう場所で、どういう状況ならやってもいいのか」 具体的に伝えます。
前述した行動療法も併用し、できたことは褒めて、我慢できる時間を伸ばしていきましょう。
まとめ
指しゃぶりなどの癖があると、やめさせることを第一に考えてしまいますが、その要因はお子さんによって違います。
お子さんの特性を理解したうえで、「やめさせる」「我慢させる」ことに重点を置くのではなく、興味や関心を広げて他の建設系な活動に転換させていくことが大切です。
児童発達支援と放課後デイサービス 運動・学習療育アップでは発達障害のある児童を対象に、デイサービス事業を行っています。
生活の中の困りごとについても、お子さんの特性を理解しながら、一緒に成長を促すお手伝いを考えていけたら幸いです。