皆さんこんにちは!本日も発達障害等に関する学びや情報交換の場所なることを願って投稿させて頂きます。

今日のトピックは「発達障害トランポリン」についてです。

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青木
発達障害にトランポリンが良いと聞きますが、どのような理由で良いと言われているのでしょうか?
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トランポリンの「何がどう良いのか」分かれば、漫然と跳ぶのではなく、狙った効果に合わせてやり方を変えることができますね。

今回はトランポリンの効果と実施方法を、感覚統合の理論を踏まえてお話します。

発達障害におけるトランポリンの効果

飛び跳ねたり、床とは違う足場の感覚を楽しんだり。
トランポリンはお子さんにも人気の遊具の1つです。

伸縮性のある布をゴムなどで枠に張り渡しているので、不安定な足場ですが、反発力を利用して通常の床より高く跳ぶことができます。

発達障害のお子さんでは、遊びを通した訓練で使われることが多いようです。

発達障害とは

発達障害とは、脳機能の発達がアンバランスで、その凸凹によって社会生活に困難が生じる障害。行動や認知の特性により、主に自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)の3つに分類される。
これら3つの特性を単独ではなく、複数持っている人も少なくない。

発達障害を持つお子さんにとって、トランポリンはどのような効果があるのでしょうか?

運動機能の改善、多動性・衝動性の抑制、覚醒、集中力の改善、情緒の安定など。
様々な効果があるとされています。

こちらのTwitterでも、トランポリンの効果を実感されているようです。

しかし、トランポリンをすることで、どうしてこのような様々な効果が得られるのでしょうか?

発達障害自体が解明されていない部分もあるため、仕方がないことではありますが、トランポリンの効果は研究などで明らかになっている部分と、そうではない部分が混在しています。

ここでは、できるだけ感覚統合の理論を踏まえながら、トランポリンの効果を見ていきましょう。

感覚統合(固有感覚・前庭感覚)による効果

トランポリンには様々な効果がありますが、それは感覚統合によるものが多いようです。

感覚統合とは

五感(味覚・嗅覚・視覚・聴覚・触覚)に加え、固有感覚(身体に対する意識の知覚)・前庭感覚(身体の傾きやスピード、回転の知覚)を含めた7つの感覚を環境に合わせて受け取る調整ができる能力。
通常は発達とともに統合され、無意識に環境へ適応できるようになる。

トランポリンでは、主に「固有感覚」と「前庭感覚」を使うことになります

発達障害に見られる感覚の凸凹では、過敏性を伴う報告が多く見られます。特定の感覚を強く受け取ってしまうため、通常の生活でも様々な音や光を強く感じてしまい、ストレスに晒されている状態になるのです。

それとは逆に感覚の受け取りが弱い「感覚鈍麻」という状態が見られることがあります。

脳にとって感覚は成長の土台になる欠かせないものなので、感覚の受け取りが弱いと、「動き回る、自分の身体を叩く」など、その感覚の刺激を求める行動として現れることがあります。

これらの感覚の凸凹により、様々な生活上の不便が生じているのです。

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青木
ところで、「固有感覚」「前庭感覚」は自覚しにくいので、あまり知られていない感覚ですね。

固有感覚とは

「固有感覚」は更に細かく分かれていますが、大まかに言うと関節や筋肉の「曲がり具合」や「力のいれ具合」などを通して感じる感覚です。

例えば、紙コップを握りつぶさないよう適度な力で持てる。手元を見なくても拍手ができる。どちらのキャベツが重いか持ち上げて比べる。
このように、生活の様々な場面で役立っています。

トランポリンでも、関節や筋肉を通して床の反発力などを感じ、適度に跳ぶ時に役立っています。

これらの感覚が足りないと、布団でぐるぐる巻かれることを好む、時には壁に身体を打ち付けるなど「自傷行為」として現れることもあります。

前庭感覚とは

「前庭感覚」は身体の傾きやスピード、身体の回転を知覚しています。

例えば、目を閉じていても乗っている車がスピードを上げたり、カーブしたことが分かる。転ばないようバランスを取る。

身体の様々な反射にも影響しており、転びそうな時とっさに足を踏み出してバランスを取る。眼球の動きにも作用し、大きく動いてもカメラのようにブレずに、見ることができる。

この感覚の受け取りが強いと、車酔いしやすくなり、逆に弱いと「くるくる回り続ける」などの行動として現れることがあります。

トランポリンで姿勢が傾いても転倒しなかったり、大きく飛び跳ねても見るものがブレないのは、この感覚が作用しているからです。

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大竹
ではさっそく、感覚の凸凹が影響する「生活上の不便」が、トランポリンをすることでどのように改善するのか見ていきましょう。

常同行動や自傷行為の軽減

同じ動作を繰り返す「常同行為」や、自ら自分の身体を傷つけてしまう「自傷行為」も、感覚の凸凹が影響していることがあります。

固有感覚や前庭感覚に関係する「常同行為」や「自傷行為」を、以下に挙げます。

  • 手をひらひらさせる
  • 飛び跳ねる
  • 身体を揺らす
  • くるくると回り続ける
  • 刺激を求め、身体を壁などに打ち付ける

など

感覚の受け取りが弱いと脳の成長に欠かせない感覚が不足しているため、その感覚を求めようと、このような行動が見られることがあります。

トランポリンをすることで固有感覚や前庭感覚が満たされると、このような行動の軽減が望めます

多動性・衝動性の軽減|授業に集中できる

感覚の受け取りが弱いと、それを求めて様々な行動をすることがあります。これは多動性や衝動性の要因の1つになっています。

落ち着くように言っても、どうしても体が動いてしまう。
じっとしていられず動いてしまう、跳んだり走ったりがやめられない。
体を動かしたいという強い欲求がある。

そのような場合も、トランポリンをすることで固有感覚や前庭感覚の要求が満たされると、落ち着くことができます

感覚統合と直接的な関係はありませんが、「身体を動かしてエネルギーを発散させる」という効果も望めます。

そのため、トランポリンをした後は気分がすっきりしたり、授業にも落ち着いて集中することが可能です。

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青木
ところで、これらの多動性・衝動性から来る行動や、「常同行為」などを無理にやめさせると、どうなるのでしょうか?

感覚の受け取りが弱いことが要因である場合、充分な感覚が得られず、発達の支障になることがあります
ストレスを感じたり、うつ病などの二次障害を生じることもあります。

やめさせるのではなく、感覚の要求を満たす。
思い切り楽しませ、満足させる。

無理にやめさせたり抑制するのではなく、充分に感覚を与え、成長を促すようにしましょう。

抑え込むのではなく、特性との付き合い方を考えることが大切です。

姿勢の改善|ボディイメージの改善

発達障害を持つお子さんは、筋緊張が低く、椅子に座っても姿勢が崩れてしまうことがあります

筋緊張とは

筋肉が持続して適度な収縮をし、張力を備えている状態。
本来は身体の筋肉が適度な張力を備え、状況に合わせて適切に緊張の度合いを変化させるが、障害などで筋の組織や神経、姿勢制御に問題が生じると、上手く調整できなくなる。

筋緊張もあまり聞きなれない言葉ですが、これが強すぎると身体が強張ってしまい、弱すぎると姿勢が保てず崩れてしまいます。

この筋緊張の調節に、固有感覚が影響しています。

筋の張り具合や関節の曲げ伸ばしの感覚を受け取り(固有感覚)、それに合わせて筋緊張を適切に調整します。紙コップを握り潰さず、適度な力で持てるのも、この働きのおかげです。

また固有感覚は、自己の身体に関する知覚である「ボディイメージ」にも関係しています。

ボディイメージが未発達だと、「歩行時に頭や足をぶつける」、「かくれんぼで入ろうとした隙間が思っていたより狭い」など、自身の体のイメージと実際の身体の大きさや位置が一致しません。

トランポリンで跳躍・着地を繰り返すことで、上下の方向への重力が加わります。

首がぐらつかず、膝折れしないよう適度な筋緊張を調整し、トランポリンからはみ出ないよう、足首で飛ぶ方向を調整します。

これらが固有感覚を受容し、筋緊張を調整する練習になるのです。筋緊張が調整できると、姿勢を保つことができるようになります。

眼球運動の改善・協調運動の改善

発達障害では、眼球運動の発達にも偏りが見られることがあります。
板書の困難さや、文章の読み飛ばしなどの要因の1つにもなっています。

前述したように、前庭感覚は身体の傾きやスピード、回転などを知覚するものですが、眼球運動のコントロールにも深く関係しています。

走ったり跳んだり、身体を大きく動かしても周囲の物がぶれずにしっかり見えるのは、この前庭感覚の働きによって調整されているためです。

トランポリンを跳びながら何かに注視させることで、眼球運動のコントロールの練習になります

更に、トランポリンをしながらキャッチボールをするなどの活動を取り入れることで、発達性協調運動の改善にも繋がります。

発達性協調運動とは

手足を同時に動かす、目で見た物に合わせて身体を動かすなど、協調運動に問題が生じるもの。身体機能に問題がないのに、脳が運動をコーディネートできないため、身体をうまく使えない障害。

発達性協調運動障害への対応ついては、こちらの記事も参考にしてください。

覚醒状態の調整

トランポリンを跳ぶ大きさやリズムによって、覚醒を調整することもできます。

激しく跳ぶことで覚醒が高まりますが、逆にリズミカルに緩やかに跳ぶことでクールダウンや鎮静効果も得られます。

ストレス解消

前述した感覚統合にも関係しますが、感覚の過敏性など様々な要因により、発達障害のお子さんはストレスを感じている場合があります。

感覚の強い刺激に晒される、うまく言葉が伝わらない、気持ちが伝わらない、周りと同じことができない、など。

ストレスが多いと、自分の中で消化できない気持ちがくすぶり、癇癪を起すこともあります。

大人でもスポーツなどで身体を動かすと、気分が爽快になります。

トランポリンをすることで気分がリフレッシュされたり、身体を動かすことでストレスが発散できると考えられています。

トランポリンなど、一定のリズムで運動すると、セロトニン(精神の安定などに関係する神経伝達物質)が分泌されるという報告もあるようです。

目的とする効果に合わせた実施方法

トランポリンには様々な効果があることが分かりましたが、ただ漫然と跳べば良いのでしょうか?

ここでは、目的とする効果に合わせた実施方法についてお話ししていきます。

体幹を鍛えて姿勢を安定させる

トランポリンをすることで得られる固有感覚を利用し、筋緊張を調整し、姿勢を改善することを狙います

トランポリン上部の手が届くぎりぎりの位置に目標物を設置し、「届くかな?」と背筋を伸ばし、大きくジャンプするよう促します。

低緊張で姿勢が崩れやすいお子さんも、体幹がしっかり安定し、跳ぶ時のバランスも取れるようになります。

眼球運動や協調性の改善

トランポリンをすることで得られる前庭感覚を利用し、眼球運動の調整や、発達性協調運動障害の改善を図ります

トランポリンを跳びながら何かに注視させることで、眼球運動のコントロールの練習になります。

「跳びながらテレビを見る」でも注視する練習にはなりますが、跳びながらキャッチボールをしたり、玉入れをするなど活動をプラスすることで、さらに目と手の協調性の発達を促すことも可能です。

覚醒のコントロール

大きく跳べば覚醒を促せますが、逆に静かに小さく跳んだり、トランポリンに立ったり座ったりしたまま静かに揺れていると、覚醒を落とすことも可能です。

音楽を取り入れることも効果的です。
軽快なもの、ゆったりと落ち着いたものなど、目的に応じて変えましょう。

デメリットや注意点は?

怖がる場合は無理に行わない

前庭感覚や固有感覚に過敏性がある場合、トランポリンなどの活動を極端に嫌がったり怖がる様子が見られます。

過敏性のため刺激を強く受け取ってしまい、普段の生活でも車酔いしやすいなどの様子が見られることがあります。

このような場合は無理に行わないようにしましょう。

安全面への配慮

落ちた時にけがをしないようにクッションマットを敷きましょう。

またお子さんの身長が高くなると、天井に頭をぶつける恐れがあります。
屋内であれば吹き抜け部分にトランポリンを設置したり、屋外で行うことも検討しましょう。

誤用症候群

どのような活動でも言えることですが、過剰な運動や間違ったやり方で行うことで、痛みや疲労などが生じることがあります(誤用症候群)

トランポリンをあまり長時間行うと膝などに負荷がかかる恐れがあります。
しかし、トランポリンは着地の際に弾力があるため、膝や腰への衝撃は普通の床より軽減されていると言えます。

また、発達性協調運動障害などで元々身体の使い方がうまくできなかったり、低緊張で足関節の安定性がない場合、足関節の捻挫などリスクが高まります。

手すり付きトランポリンなどの使用も検討し、極端に運動が苦手な場合は、作業療法士や理学療法士の指導のもと実施しましょう。

振動や音への配慮

集合住宅で屋内にトランポリンを置く場合、振動や音にも配慮が必要です。
また、実施する時間帯にも注意しましょう。

振動や安全性にも配慮した商品

振動や音、安全面にも配慮した商品を紹介します。

こちらのジャンピングボードは、台が低く跳ね過ぎないので、小さなお子さんが使用しても安心です。購入者のコメントでは、振動も少ないようです。

ジャンピングボード ピンク(1個)posted with カエレバ楽天市場AmazonYahooショッピング

こちらのトランポリンは手すり付きです。購入者のコメントでは、音も静かとのことです。

btm 補助手すり付き トランポリン 耐荷重 posted with カエレバ楽天市場AmazonYahooショッピング

屋内にトランポリンを置く場合は、安全性や振動を軽減するために、トランポリンの下にこちらのようなマットを敷くことをお勧めします。

ジョイントマットシリーズ カラーマット チョコレート(8枚組)posted with カエレバ楽天市場AmazonYahooショッピング

トランポリンが実施できる施設

自宅での実施が難しい場合、トランポリンが実施できる施設がないか探してみましょう。

障害者入所・支援施設、発達支援センター、デイサービスセンター、療育に関わる病院や施設のリハビリテーション科など。

トランポリンは人気があるため、取り入れている施設も多いようです。

しかし、地域によってはインターネットなどで検索しても見つからないことがあるかもしれません。
そのような場合は、発達障害者支援センターなど身近な発達支援に関わる機関に問い合わせてみましょう。

まとめ

今回は発達障害におけるトランポリンの効果を、できるだけ科学的根拠を踏まえてお話しました。

根拠を知ることで、実施する際もただ飛び跳ねるのではなく、狙った効果によってやり方を変えたり、様々な要素を取り入れたりアレンジすることもできます。

安全面にも配慮し、楽しみながら行いましょう。

横浜市都筑区児童発達支援と放課後等デイサービス 運動・学習療育アップ

児童発達支援と放課後デイサービス 運動・学習療育アップでは発達障害のある児童を対象に、デイサービス事業を行っています。

お子さんの成長や個性に合わせて様々なプログラムを実施していますので、興味がありましたら、ぜひお問い合わせください。