皆さんこんにちは!本日も発達障害等に関する学びや情報交換の場所なることを願って投稿させて頂きます。

今日のトピックは「発達障害漢字」についてです。

「発達障害で漢字が書けない」と言っても、いろいろな要因が考えられます。

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青木
漢字だけでなく、絵や図形も描けない。そもそも鉛筆が上手く使えない、集中できない…。
いろいろな状態が考えられますね。
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大竹
要因は人によって様々。いろいろな個性があるのと同様に、学び方にも個性があるんです!

今回は要因を学習障害に絞り、学び方の個性に着目して「継次処理と同時処理」を活用した漢字学習の方法をお伝えします。

「発達障害で漢字が書けない」要因の整理

「発達障害で漢字が書けない」と言っても、その状態は人によって様々で、要因も多岐に渡ります。

改善法や学習方法をお話する前に、少し要因の整理をしましょう。

発達障害とは

発達障害とは、脳機能の発達がアンバランスで、その凸凹によって社会生活に困難が生じる障害。行動や認知の特性により、主に自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)の3つに分類される。
これら3つの特性を単独ではなく、複数持っている人も少なくない。

発達障害で漢字が書けない場合、主に以下のような要因が考えられます。

  1. 注意や集中が逸れてしまう → 注意・衝動性の問題
  2. 紙に反射する光がまぶしい → 視覚過敏
  3. 筆記具が上手く使えない → 巧緻性・協調性の問題
  4. ものの形を認識できない → 空間認知の問題
  5. 書字自体が困難 → 学習障害の中の「書字表出障害」

など

要因は多岐に渡るため、ここでは「5.学習障害の中の書字表出障害」に絞ってお話していきます。

学習障害とは

知的発達に遅れがないのに、読む・書く・聞くなど、特定の学習への困難さが見られる。
1.書字表出障害(ディスグラフィア):書字が困難
2.読字障害(ディスレクシア):読むことが困難
3.算数障害(ディスカリキュリア):数の概念、図形の理解が困難

ここでは触れませんが、視覚過敏や読字障害(ディスレクシア)の症状や対処法については、こちらの記事を参考にしてください。

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大竹
発達障害 > 学習障害 > 書字表出障害
ここでは、この「書字表出障害」に絞ってお話していきます。

漢字の学習にも利用できる同時処理と継次処理とは?

同じものを見ても「どのように考え、どのように他者に伝えるか」は、人によって違います。
これは認知処理様式という「考え方の個性」の違いによるものです。

どちらの学習方法が合うか、2つの認知処理様式について見ていきましょう。

2つの認知処理様式

あなたは人に道順を教える際、どのような手段を取りますか?

「はじめの角を右へ曲がり、そのまま信号を2つ分進むと、すぐ左に駅が見えます。」と、時系列で順番に説明するでしょうか。

それとも地図を広げ、「駅はここにあるので…」とはじめに全体像を把握し、地図や記号、位置、言語など複合的な情報を用いて説明するでしょうか。

これは認知処理様式がどちらのタイプが強いかによって、特徴が出てきます。

継次処理タイプ:情報を時間的な順序で処理する

同時処理タイプ:複数の情報を、その関連性に着目して全体的に処理する

認知処理の仕方は、人それぞれ違います。
「どちらが良い、優れている」という訳ではなく、個性の1つです。

得意ではない方で説明を受けてもすぐに理解できない場合、こうした認知処理の仕方の違いが影響していることがあります。

どちらを優位に使うかは定型発達の人でも偏りがありますが、発達障害があると、これが強く偏っている場合があります。

継次処理タイプの特徴

時系列で順序立てて物事を考えます。

継次処理タイプが得意なこと

  • 時系列で手順を説明すること、手順の再現をすること
  • 手順書や見本があれば作業できる
  • 1つずつ行うので、ミスは少ない

継次処理タイプが苦手なこと

  • 目的や最終地点など全体だけを示されても、そのに至るまでの手順をイメージできない
  • 見本がなかったり、途中の情報が不足している場合、何からするべきか分からない

同時処理タイプの特徴

継次処理タイプが時系列で順序立てて物事を考えるのに対し、同時処理タイプは情報を同時にまとまりとして考えることが得意です。
また複数の情報があっても、関係性や因果性を発見することがあります。

同時処理タイプが得意なこと

  • はじめに全体像や最終的な形や目標を示してから教えると、理解が早い
  • 地図を見て位置関係を把握できる
  • 最終目的など示されると、曖昧な指示でも動ける
  • 一見無関係なものの規則性を見出すことができる

同時処理タイプが苦手なこと

  • 最終目的を示されず、やり方だけ指示されること
  • 図が無い、文字だけの説明書
  • 全体を見ることができる反面、細部のミスが多い

どちらのタイプか判別する方法

上記の特徴のように、普段の生活や会話、学習方法などを観察することでも判別できます。

時系列での説明を得意とし、聴覚優位であれば継次処理タイプ。
絵や図を用いた説明を得意とし、視覚優位であれば同時処理タイプ。

また、これらはWISCやK-ABCなどの検査でも、特性が分かる場合があります。

例えばK-ABCでは読み書きだけではなく、継次尺度・同時尺度などの認知検査も行います。これらの数値で、偏りの有無や「得意・不得意」などを数値として見ることが可能です。

発達に関する検査の相談機関や準備などについては、こちらの記事も参考にしてください。

認知処理様式の漢字学習への活用

上記の2つの認知処理様式は、漢字学習にも活用できます。

継次処理タイプ

継次処理タイプの漢字学習のポイント

継次処理タイプの漢字学習では、以下ような特徴があります。

  • 完成した漢字を見ても、書き順をイメージできない
  • 書き順が順序立てて示されていないと、どこから書けば良いか分からない

継次処理タイプが漢字の学習をする場合は、筆順を主体とした書字練習が適しています

書き順が示された教材、指書き、なぞり書き、写し書きなど。

書くときは「1、2、3」と言ったり、漢字の一画一画を「縦、横、斜め」など意味付けしながら練習するお子さんもいるようです。

継次処理タイプにオススメな学習教材

こちらのアプリは、書き順が分かりやすく示されており、継次処理タイプの漢字学習にオススメです。

各漢字には書き順、番号、点線の矢印が入っており、なぞった後も透けて見えるため、順番も確認できます。

小学1年生漢字練習ドリル

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またMicrosoftのPowerPointでは、書き順付文字スライドが無料でダウンロードできます。

スライドショーにすると、書き順を確認することができます。
一画ずつパーツが分かれているので、これを利用してオリジナルの学習教材を作ることも可能です。

使い方はこちらの動画でも説明されています。

同時処理タイプ

同時処理タイプの漢字学習のポイント

同時処理タイプの漢字学習には、以下のような特徴があります。

  • 漢字の書き順に拘らず、絵のように書くことが多い
  • はじめに完成した漢字を示されないと、書き順に沿って指導されてもイメージできない
  • 線が一本足りない、「止め」や「はね」ができていないなど、細かいミスが多い

同時処理タイプが漢字学習をする場合は、はじめに完成した漢字を示し、視覚的な課題を用いた練習が適しています

同時処理タイプでも、得意な学習方法はお子さんいよって違う場合があります。

例えば「歩」という感じを覚える場合、「止」「少」パーツに分け、パーツを1つの固まりとして覚えるお子さんもいます。

また、人が歩いている様子を映像としてイメージして、漢字とセットで覚えているお子さんもいます。

お子さんに合わせた学習方法を検討することが必要です。

同時処理タイプにオススメな学習教材

こちらは、漢字をの「偏」と「旁」に分けたカードになっています。
ゲームのように楽しむこともできます。

このような漢字パズルは、前述したPowerPointのスライドを利用しても作成できます。

スライドの文字は一画ずつ編集できるため、「線を一本消して間違い探しをする」など、オリジナルの学習教材を作ることもできます。

こちらのTwitterでも、漢字をパーツに分けた学習法をされているようです。

https://twitter.com/tasmolife/status/1264356750389469184

こちらの漢字カルタは、漢字が表すイメージを絵と合わせて覚えることができます。

101漢字カルタ 新版/太郎次郎社/宮下久夫posted with カエレバ楽天市場AmazonYahooショッピング

他にも「粘土で漢字を作る」という勉強法もあります。

  • 同時処理タイプは全体を大雑把に把握しているため、「止め」や「はね」など細かいミスがある。

    → 粘土で作製することで、細部に注目して「止め」や「はね」を意識できる。
  • 漢字を図形や絵のように把握しているため、紙に書かれた二次元の文字では、線がどう重なっているか理解できない。

    → 粘土で作製することで、線の交わりなどを理解できる。

限られた通常の授業の中で行うには時間的にも限界があるため、家庭学習などで行うことも必要です。

学び方の個性に配慮した教育

合理的配慮とは

漢字の学習に限らず、教育の現場では合理的配慮という考え方が導入されています。

合理的配慮とは

障害の有無に関わらず、平等に人権を享受し行使できるよう、各々の場面で生じる障害をを取り除くため、個別の調整や変更をすること。

障害のため学習に躓きがあるお子さんでも、一人ひとりの特性や教育のニーズに合わせ、本人や周囲の人が納得したうえで、適切な配慮をすることが大切です。

合理的配慮の例

例えば学習障害で漢字が書けない場合、社会や理科など他の教科についても、問題の答えは正答しているのに、漢字が間違っているためにテストでは点数が取れないことがあります。

本来は社会や理科の学習について判定する目的のため、「少し漢字が違っていても意図した答えがあっていれば正答とする」「パソコンでの文字入力した解答を認める」などの配慮をすることができます。

以下に、その他の例を挙げます。

  • テストの解答や授業中のノートに、パソコン等で文字入力することを認める
  • 読み書きが困難な方に、タブレットや音声読み上げソフトでの学習を認める
  • 板書が困難な方に合わせて、板書の代わりに写真を撮ることを認める

このようなICT(情報通信技術)を用いた学習も、少しずつですが普及してきています。

ICTとは

情報通信技術。情報処理だけでなく、インターネット等の通信技術を利用したサービスの総称。パソコンやスマートフォン、遠隔地への通信教育、高齢者の安否確認など、様々なものに利用されている。

こちらは、宿題の仕方を工夫することで、お子さんの持っている力が発揮できるよう配慮されています。

2012年の文部科学省の調査では、何らかの発達障害の可能性がある生徒は6.5%、学習面に著しい困難を抱える生徒は4.5%と報告されています。

20人のクラスに約1名は学習面に著しい困難を抱える生徒がいるということになります。

(参考: 文部科学省初等中等教育局特別支援教育課「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児 童生徒に関する調査結果について」

しかし、書字表出障害などの学習障害は、まだ広く認識されておらず、「努力が足りない、たくさん練習したらできるはず」など誤った認識をされている場合もあります。

学校でも合理的配慮が浸透しておらず、教員だけでなく周囲のクラスメイトからも特別扱いだと揶揄されるケースもあるようです。

お子さんにはどのような特性があり、どうしたら力を発揮できるのか?
お子さんの特性を踏まえて、学校に相談してみましょう。

また、発達障害者支援センターなど身近な発達支援に関わる機関に問い合わせてみましょう。

下記に相談機関に関する記事を用意しました。よければ併せてご覧下さい。

まとめ

今回は漢字学習について、継次処理タイプと同時処理タイプという、2つの認知処理様式を活用した学習方法をお話しました。

2つの認知処理様式のバランスは人によって違い、特に発達障害では極端にどちらかに偏っている場合があります。

お子さんの認知処理様式の特徴を知り、学び方の個性に合わせた学習方法を検討していきましょう。

横浜市都筑区児童発達支援と放課後等デイサービス 運動・学習療育アップ

児童発達支援と放課後デイサービス 運動・学習療育アップでは発達障害のある児童を対象に、デイサービス事業を行っています。

お子さんの成長や個性に合わせて様々なプログラムを実施していますので、興味がありましたら、ぜひお問い合わせください。