皆さんこんにちは!本日も発達障害等に関する学びや情報交換の場所になることを願って投稿させて頂きます。
今日のトピックは「算数ができない発達障害」についてです。
このままでは将来も不安なのでどうにかしたいんですが。
特徴や改善方法などお話させて頂きますね。
人それぞれ勉強の中でも、教科によって向き不向きはあると思いますが、その度合いが大きい場合は発達障害の可能性もあります。
算数が特に苦手なお子さんがいる親御さんは、原因のひとつとして考える必要もあるかもしれません。
この記事では、算数が苦手な発達障害の特徴や困りごと、対処・改善方法などを中心に解説していきますので、学習への向き合い方などについての参考にしてみてはいかがでしょうか。
目次
算数が苦手な発達障害の特徴とは
発達障害のひとつに学習障害(LD)という障害があります。
学習障害は「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「関連づけて考える」「推論する」といったことが極端に苦手な特徴があるのです。
発達障害でも自閉症スペクトラムや注意欠陥多動性障害などはコミュニケーションなど社会性の欠如に問題が出てきますが、学習障害の場合ではこういった症状が出ないことも多く、一見問題のないように見えても、学習の場面で顕著に困難さが現れます。
今回ご紹介するのは、これらの学習障害の中でも計算や数学的推論、関連づけ、などが苦手な算数障害についてです。
別名「ディスカリキュリア」とも呼ばれ特徴には個人差があります。
算数には数字の概念や計算、推論などいくつか必要な能力は分かれますが、これがひとつ、もしくは複数に渡って苦手な場合があるのです。
以下に具体的な特徴をご紹介していきましょう。
数字の大小がわからない
数の大きさを表す「基数性」と数の順番を示す「序数性」が理解できないことから、どちらが多いか少ないか、順位や対象物が何番目のものかを理解できないケースがあります。
繰り上げ、繰り下げがわからない
原因の一つとして、一時的に情報記憶するためのワーキングメモリが不足していることが原因であると言われています。
繰り上げ、繰り下げの場合で言えば、一時的にその数字を頭に記憶した状態で次の計算を考える同時処理が苦手であるということです。
短時間の間、情報を頭に留めながら、同時に他のことを考える処理能力のことを指します。
脳の前頭前野が処理を担っているとされ、日常生活、仕事、会話、学習、などの生活と密接に関係する能力です。
数字の分解がわからない
例えば計算では、数字の分解が苦手で「10=3+?」のような計算を理解するのが難しいといったものや、中には中学生になっても指計算しないと解けないなどの特徴があります。
九九をなかなか覚えられない
九九をいつまでも覚えられないことで、親や学校の先生などが算数障害に気づく場合があります。
九九が苦手な場合、数字の処理や筆算なども苦手なことが多いでしょう。
文章問題が理解できない
文章問題では、読解力とそこから導き出す答えの出し方について考える必要があります。
算数障害では、その情報を頭に留めながら考えるのが苦手だったり、推論してモノゴトを考えることが難しいため、極度に苦手になるということがあるのです。
グラフや図形がイメージしづらい
グラフでは数学的な概念と図形の関係性を理解する必要があります。
また、図形では空間認識能力や、方向を変えた時の見え方などをイメージする能力が必要ですが、算数障害の方の中にはこれらのを理解するのが困難な場合もあるようです。
算数障害で困ること
算数障害で困ることは大きく分けて、学校等での学習、数字を扱う仕事、日常での金銭管理、の3つでしょう。
学習で困難を抱える
算数や数学といった教科では周囲についていけず、「いつまでたっても計算が遅い」「計算間違いが極端に多い」といったことが見受けられ、一般的には1~2学年程の習熟遅れが出てきます。
本人は本気で取り組んでいるのに、「勉強不足」と捉えられてしまうケースもあり障害を見過ごされてしまうこともあるので注意が必要でしょう。
数字を使う仕事が困難
当然ではありますが、経理やエンジニア、会計士といった数字を多く扱うような仕事では困難を感じることが多くなります。
また、症状が強ければこのような仕事に就く機会もあまりないと思われますが、中には計算が苦手でも数学的推論などは得意というケースもあるため、仕事に就いてから問題が顕在化する場合もあるでしょう。
買い物や金銭の管理が難しい
金銭のやりとりは常に計算が必要なため、算数障害の方で苦手意識を持つ方は多いようです。
例えば、「おつりが計算できない」「お金の高い安いがすぐにわからない」「割引額が計算できない」といった困難があるため、金銭管理がうまくできず、経済的に困窮しやすい傾向にあります。
時には財布の中身が全て無くなるほどの買い物をしてしまったり、借金をしてしまうケースもあるということで、生活への影響はとても大きいと言えるでしょう。
時間の計算が難しい
算数障害の方の中には「〇時までに到着する為には何時の電車に乗れば良いか」といった時間の逆算や、「〇時の2時間後は〇時」といった時間の計算が難しいこともあり、遅刻や早く到着し過ぎるといった問題があります。
また、以下の動画では実際に算数障害を抱える方が小学生のドリルを解かれています。
計算や問題の説明、時間の計算などが困難な様子がわかり、特徴を理解する参考になるでしょう。
算数障害を疑ったら
子供の算数障害が気になる場合はどこで相談、診断をしてもらえば良いのかと思う方もいることでしょう。
そこで、相談機関や診断してもらえる病院について解説していきます。
各自治体の専門窓口
各自治体では以下のような発達障害専門、あるいは障害全般における相談・支援窓口があります。
発達障害者支援センター
当事者とその家族への支援を目的として全国の各自治体に設置してある発達障害専門の機関です。
医療機関や教育、労働機関といった外部と連携して支援ネットワークを構築しているので、発達障害について相談するのに適した場所と言えるでしょう。
発達障害を専門に診てもらえる病院も紹介してもらえますし、子供から大人まで対応してもらえるので長期的な相談先としても良いでしょう。
子育て支援センター
親子の交流の場や、親が子育てについて相談する場として活用されています。
子育て支援センターで最も身近なのが児童館でしょう。
気軽に立ち寄って子供を遊ばせながら子育ての悩みを相談することもができます。
様々なアドバイスや地域の情報なども教えてもらうことができますので利用してみてはいかがでしょう。
保険センター
保健師や看護師、栄養士、理学療法士などが配置されており、健康相談、保険指導、予防接種、健診など地域の健康づくりの役割を担っています。
発達障害を専門に扱っているのは、先に紹介した発達障害者支援センターですが、2次障害など心身の健康問題などでも心配ごとがあれば保険センターでも相談してみるとよいでしょう。
以上、相談できる公的機関をご紹介しましたが、こちらの記事でも子育てに関する悩みの相談機関にいついて解説していますので、併せて参考にしてみてはいかがでしょうか。
専門病院
発達障害を扱う医療機関は子供の場合、発達障害を専門に診ている小児科になります。
ちなみに、大人の場合は心療内科や精神科となりますが、いずれも発達障害を扱っていない病院もあるので事前に確認するようにしましょう。
以下では発達障害を専門に扱う全国の病院が紹介されているので、活用してみてはいかがでしょうか。
算数障害の基準は?
算数障害に関わらず、子供の発達障害を診断する際には「DSM-5」という診断基準で検査が行われます。
(16歳以上の大人の場合は「WAIS-3」という診断基準を使用)
以前まで使用されていた「DSM-4」では学習障害という診断名になっていたものが、「DSM-5」に改定されてから「限局性学習障害/限局性学習症」という名称に変更されました。
限局性学習障害の中には、以下の3つの分類がされており、算数障害は3番目の分類が該当します。
- 漢字の障害:読字理解、速度、正確性における特定の問題
- 書字表出の障害:文法、文構成、文章作成における特定の問題
- 算数の障害:計算、数字、記号の模写、それらの理解における特定の問題
算数障害の具体的な診断の目安としては「算数障害の特徴」の項でお伝えしたような数の感覚や計算の正確性、スピード、数学的概念の理解といった点で著しい困難があるかで判断されます。
算数障害でも得意な算数分野がある場合も
これは意外に感じるかもしれませんが、中には算数障害であっても、「九九や計算は苦手だけど代数問題などの数学的推論は得意」という子供もいます。
この逆のパターンもあり、算数障害であっても算数の全てが苦手とは限らないのです。
こちらの本は、「算数はできるのに計算ができない子供」についてのお話となっています。
算数でも分野によって凸凹が出る状況がよくわかるので参考になるでしょう。
算数の天才なのに計算ができない男の子のはなし 算数障害を知ってますか? /岩崎書店/バ-バラ・エシャムposted with カエレバ楽天市場AmazonYahooショッピング
このように、発達の凸凹が極端な場合、”できること”が”できないこと”を目立たなくすることで障害に気づくのが遅れる場合もあり、注意が必要でしょう。
発達障害は一つの障害だけでなく、複数の障害を併発している場合もあるため、原因が複雑化して判別が難しいこともあります。
以下の記事では、5歳頃に現れやすい発達障害の特徴について解説していますので、判断の参考にしてみてはいかがでしょうか。
算数障害の対処・改善方法
算数障害への対処や改善を考えるには、まず算数のどの部分に苦手が出ているかを確認しておきましょう。
これは、親子で宿題などに取り組む中で気付くこともあるでしょうし、学校の先生に障害について伝えておくことで授業中に気付いてもらえるかもしれませんね。
また、先にお伝えした支援機関や病院を利用した際に相談してみても良いのではないでしょうか。
その上で学習、仕事、日常生活の3つの視点で算数障害への対処・改善方法について解説していきます。
学習での対処・改善方法
算数障害の子供が最初に困難を抱えるタイミングは学童期になるでしょう。
ここでは学習場面での対処・改善方法についてご紹介します。
特徴に合わせた工夫とトレーニング
先にご紹介した通り、算数障害でも計算が苦手な場合と数学的推論が苦手な場合があります。
計算が苦手な場合は、桁を間違えないようにしたり、計算する内容全体を把握する能力が弱いケースがありますが、例えばマス目のあるノートを使うことで桁数や計算する行などがわかりやすくなるでしょう。
次に数学的推論が苦手な場合は、計算の手順書のようなものを作り、手順に従って解く練習をすることで改善が見込めます。
このように、その子の特性をサポートするような方法を考えることで、改善のヒントが見つかるのではないでしょうか。
電子機器、ICT機器の活用
学習をわかりやすくしてくれる電子機器やICT機器を活用するのも良いでしょう。
算数障害で役立ちそうなものの例としては、電卓、タブレットといったものです。
電卓は計算間違いの多い子供の正解率を上げる効果が認められており、タブレットでは視覚認知バランサー、ビジョントレーニングなどの視覚認知機能を鍛えるアプリがいくつか出ています。
以下はそのアプリの一部を紹介していますので参考にしてみてはいかがでしょうか。
視覚認知バランサーposted with カエレバ楽天市場AmazonYahooショッピング
ビジョントレーニング IIposted with カエレバ楽天市場AmazonYahooショッピング
これらのアプリは注意・記憶・形状識別・空間認知・運動統合といったトレーニングができるのでワーキングメモリを鍛えるのにも有効でしょう。
図やイラストでわかりやすく
小さい子供向けの学習ではイラストを使った問題が多いかと思いますが、学年が高くなるにつれて、文章と数字のみの文章問題が増えてくることから、脳内で内容をイメージできず理解できない場合があります。
このような時は、問題の内容を図やイラストなどを自分で描いてみてイメージを視覚的に理解しやすくしてみましょう。
また、自分で描くことで理解しやすい方法に気づくキッカケになることもあるので、できるだけ子供自身で描いて考えるようにすると良いでしょう。
仕事での対処方法
将来的な職業についてもできるだけ早い段階で検討してみるのが良いでしょう。
当然ではありますが、仕事をする上で数字を多く扱うものは避けることに越したことはありません。
仕事としては好きで、やってみたいと思う際は挑戦してみるのもひとつの選択肢ではありますが、子供の特性と仕事との相性や、期限を決めてやってみる、といった計画を立てる方が良いのではないでしょうか。
数字を扱わない仕事の例としては以下のようなものがあります。
- 演劇・テレビなどのディレクター
- 国語・社会・歴史の教師
- 博物館などの学芸員
- 心理学者・カウンセラー
- 作業療法士
しかし、完全に数字を使わないことは難しいため、対処法は考えておくべきです。
例えば、計算結果が合っているか確認してもらったり、やり方をメモしておく、自分なりのマニュアルを作る、エクセルなどであらかじめ数式を組んでおく、などの対処をすることで、特性をカバーできることもあるでしょう。
日常生活での対処・改善方法
日常生活での算数で、最も困難を感じやすいと言われるのがお金の管理です。
最も手軽なのは電卓を使うことで、これだけでも日常生活はある程度対処できる場合もあるので、スマホの電卓機能などを意識して使うと良いですね。
また、高い、安いがわからない場合では、価格の相場を教えてもらい、それを基準に買い物をすることで極端に高い買い物は避けることができるでしょう。
時間が計算できないのであれば、スマホの乗り換えアプリや地図アプリで目的の到着時刻から検索すれば、「おおよそ予定時刻に到着できるようになった」という声も聞かれます。
放課後等デイサービスアップ
「子育てに向けてのお役立ち情報」を運営しているアップでは「集団生活の中で生きる力を身につけさせる」を理念として運営しています。
学習のサポートや視知覚トレーニング、ワーキングメモリトレーニングなども取り入れたカリキュラムを組んでおり、学習障害の子供の手助けになるかもしれません。
もしご興味があればお気軽にご相談ください。
まとめ
算数ができないことで将来へ不安を抱くこともあるかもしれませんが、障害がどんな部分に影響を与えているのかをよく観察することで解決や改善のヒントが見つかることもあります。
発達障害全般に言えることですが、障害の特性は人によって千差万別ですので、算数が苦手と言っても、その傾向は人によって違うことが本記事で少しはご理解頂けたのではないでしょうか。
原因がある程度わかれば、効果的なトレーニング方法なども探しやすくなり、お子さんの学習力向上にも繋がるかと思いますので、まずはどんな所に苦手を感じているのかを見つける所から始めてみてはいかがでしょうか?