今日も皆さんと一緒に発達障害等に関する学びや情報交換の場所となることを願って投稿させて頂きます。 今日のトピックは「発達障害・物忘れ」についてです。

発達障害はその特性によって、自閉症スペクトラム(ASD)や注意欠陥多動性症候群(ADHD)、学習障害(LD)などに分類されます。

この中でADHDは物忘れに悩まされる方が多いと言われています。

「物忘れって誰でもあるよね?そんな気にしなくていいよ」と思いますよね。

しかしADHDの特性として挙げられる“物忘れ”は日常生活に影響を及ぼしたり、生涯の悩みとなることもあります。

忘れた内容が他の人からは“たいしたことない”と思われるものであっても「またやってしまった」とひどく落ち込み、傷つく方もいます。

特に子供の頃は学生時代に物忘れが“忘れ物”という形で表立ってしまう為に上記したような“悩み”や“傷つき体験”となってしまいます。

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大竹
今回は、ADHDの子の物忘れについてお伝えしたいと思います。

ADHDの物忘れ、なぜ起こるのでしょう

ADHDが起こる原因はまだはっきりと解明されていないと言われています。遺伝的要因や環境要因により脳の機能や脳の一部の前頭野部分の機能がうまく働かないことで脳の働きに偏りが生じるなど、未だに研究が重ねられています。

“具体的な原因が分かっていない”ことが答えと言えますが、ADHDの特徴をお伝えします。

脳の機能がうまく働かないことが原因でADHDの症状が表れると言われていますが、生まれつきその症状は表れません。

保育園・幼稚園で集団行動をとるようになる3〜4歳で集団行動を取ることが困難、他に怒りっぽいなどが目立つようになると言われています。園の先生により気付かれるケースや3歳児健診で医師から指摘されて気づくケースがあります。

小学校にあがる6〜7歳くらいの年齢になると、より明らかにADHDの特徴が見えることがあります。特に、物忘れ=忘れ物を繰り返すことで本人が他の子との違いに気づき易くなると思われます。

有病率として様々な報告がありますが文部科学省が2012年に発表した調査結果を記載します。

全国の公立小・中学校の通常学級に在籍する生徒のうち発達障害の可能性があるとされた小中学生は6.5%にのぼるとされ、10人に1人が発達障害を抱え、1クラスに2人の計算になります。

ADHDについては、2006年と2013年の人数を比較してみると、約6.3倍増加しているそうです。

決して珍しくはない障害で、具体的な診断がついていないADHDの傾向がある方も含めるともっと多くの方がADHDの症状を抱えていると考えられます。

子供の頃に経験する“傷つき体験”に家族の言葉が影響することも

現在では数値が表すように、身近で認知度も上昇してきた病気や症状と考えられます。

ですが、自分の子供にADHDの傾向が見られたり指摘を受けてもすぐには受け入れられなかったり、「ADHDからくる行動では?」とすぐにピンとこなかったり、そういった方は多いとは言えません。

結果、子供の頃にご家族から次のような言葉を言われひどく傷つく方もいます。今回は物忘れに関することをテーマにしていますので、物忘れ中心に挙げていきます。

お心当たりはありませんか?

  • 「忘れ物ばかりするのは、あなたの確認が足らないからでしょ?」
  • 「いい加減に忘れ物をなくしたらどお?気合いが足らないんじゃないの?」
  • 「お母さんとの約束、もう忘れたの⁉︎ついさっき、約束したよね?なんで守れないの?」
  • 「何回言ったら分かるの?いつもじゃない、靴下脱ぎっぱななしだし、カバンは放っておくし、ゴミは片づけられないし‥」

親御さんの中でハッとした方もいるのではと思います。子供に真剣に伝えたい気持ちがある時ほど、言ってしまいがちなことではないかと思います。特に“いつも”“何回言ったら〜”“もう〜なの⁉︎”に子供は傷つくと聞きます。

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青木
子供時代にADHDによる物忘れで辛い思いをされた事例がテレビで紹介されており、記事になっていましたのでご参照下さい。

直子はアスペルガー症候群に加えもう一つの発達障害を抱えていた。

それは「ADHD(注意欠如・多動症)」という発達障害。落し物や忘れ物の不注意が多く、没頭すると過剰に集中する。

直子のこの特性は中学生になると次第に目立つようになった。部屋は足の踏み場もないほど散らかっていた。

親が何度注意しても片付けることができない。

通常、物を整理する際に綺麗になった状態をイメージしてそれに向かって片づけていくが、そのイメージが出来ない直子は何をどう片付けたらいいのかはわからなかった。

0テレ

ADHDの子は知的に高い傾向もみられる為に、理解力はあるのです。ですので、忘れ物をしたら「しまった」という気持ちも抱きますし、忘れ物をしないよう陰で相当な努力も重ねます。

実際に聞いた話

実際に聞いた話をご紹介します。小学校3年の時に忘れ物が多くてしょっちゅう先生に声をかけられ、親にも先生から電話で忘れ物の多さを伝えられていた経験のあるAさんという女性。

忘れ物をしているのではないかと毎日プレッシャーを感じながら、前の夜に何度もランドセルの中を確認して当日朝にも確認するのに、それでも忘れ物を繰り返してしまう。

お母さんからも「なんで繰り返すの?」と繰り返し言われることで“自分の努力が足らないから自分が悪いんだ”という気持ちに苛まれたとのことです。

また、自己否定や自信をもてないまま過ごしていたと話して下さいました。

大人になった時に表れる影響とは?

Aさんの事例にもありましたように、物忘れを繰り返すことで自己否定や自信をもつことができない思考パターンが大人になっても根付いてしまう方は多いのです。

子供の頃に物忘れが頻繁にあり、周りからは協力どころか「なぜ直らないの?」と責められるような言葉をかけ続けられる。そんな環境の中、大人になっていくことでマイナスの思考パターンをもってしまうのは自然なこととも言えます。

社会に出てうっかり忘れをした時に周囲から見るとそこまで落ち込まなくてもいいのにという位に落ち込み、動揺し、その気持ちを引きずってしまう方もいます。

例えば名札のつけ忘れのような“うっかり忘れ”においても深く傷つく方もいます。その傷つきを周囲に分からないようにしていることも多いので、周囲が全く気づかないこともあります。

子供の頃でしたら叱られることよりも、家族や学校の先生など周囲の大人に心配をかけたくないという意識が働く為とも考えられます。

物忘れ防止の為にできること

ADHDの特性による物忘れは子供の頃よりその傾向が表れることが多いです子供の頃から物忘れへの対処をすることができれば、傷つく機会が減りマイナスの思考パターンが根付くことなく成長できると考えられます。

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大竹
物忘れ予防のサポートの仕方について考えてみましょう。

家族の言葉

ご家族がサポートできる状態になるには、まずは子供さんの物忘れに理解をもつことが必要です。ADHDやその傾向があると診断されている場合は、病気や特性への情報や理解をもつことです。

その際には、主治医の力を借りてご家族への説明をお願いしても良いのです。

ADHDの診断がついていない段階では「忘れ物って誰でもするけれど、うちの子忘れ物が多いのでは?」と疑問をもつことです。

そこで、忘れ物や物忘れで困っていることがないか、どんな努力をしているのかを聞いてみます。

ADHDの診断がついている場合

家族であっても、詳しく聞き出さないと分からないこともあります。

まずは「私も忘れ物することあるよ。どうして忘れ物をしてしまうんだろうね。困っていることを話して欲しいんだけど、いい?」という風に状況を聞くことがサポートにも繋がります。

状況を聞くより先に“叱ってしまった”という状況であっても、叱ったことを謝った上で困っていることを聞いても支障ないと思われますので、実践をおすすめします。

他に、物忘れが続いているかどうか、物忘れしたことで学校でどんなことがあったか、子供はどんな気持ちがしているか、“実際の状況を聞く”ことです。

家族のサポート

状況の聞き取りから、次のステップになるのが“家族のサポート”です。

“サポートがいるかどうか”、“どの程度のサポートをして欲しいか”を子供さんの意思も確認しつつ作戦を立てていくのが良いでしょう。

物忘れ防止の作戦の例を挙げてみます。

物忘れ防止の作戦<例>

・明日の持ち物を家族とダブルチェック→これでも、もし忘れ物をしてしまっても「共同責任だから大丈夫だよ」と打ち合わせしておく

・明日の予定を紙に書いて、外出する“靴”に貼り付けておく→ドアノブやドアに貼り付ける方法もありますが、意外と見落とすことが多いようです

・物忘れ防止が成功したらカレンダーに好きなシールを貼っていく

・学校の先生にもADHDのこと・物忘れしやすいこと、その為にどんな工夫や努力をしているのかを聞いてもらう→家族から伝える・家族と一緒に直接伝える・物忘れした時の声かけの仕方でお願いしたいことなどを作戦会議した上で伝える

相談窓口の力を借りる

物忘れ防止の為の工夫を考える際に、公共の相談窓口の力を借りるのも手段の一つです。

また、そういった窓口を通じてADHDなどの発達障害の子供さんがいるご家族と交流する場にも参加する機会がありますので、そこを通じて新しい対処法を知ることもできます。

・市町村区の子供発達相談センターや子供の相談窓口、子育て支援センター→各市町村区のや役所や支所の保健福祉関連の窓口にまずは連絡してください。そこから具体的なさらなる相談窓口等の案内を受けられます。

・発達障害の子育てサークル→公の機関を通じて作られたサークル、ツイッターなどのSNS上で募集されているサークル、多くのサークルが立ち上げられています。

・放課後等デイサービス→発達障害のある子供さんの個性を活かしながら社会性やコミュニケーションスキル等を支援してもらえる、放課後や学校ない日に通える場所のことです。

神奈川県横浜市にあるアップも、放課後デイサービス施設のうちの一つです。

ここでは子供さんの特性に合った運動や学習療育を行っています。学校や日常生活での不安などがある場合など、ぜひお気軽にお問合せください。

専門医への相談

子供さんやご家族での努力ではどうにも予防できない位の物忘れで悩まれている時は、早めに専門医や主治医への相談を行なって下さい。その際、遠慮されることなく具体的にどこでどの程度困っているかを相談されることです。

医師の判断によりADHDの特性を和らげる内服薬を勧められることもあります。

薬の効果によって物忘れが緩やかになったり、片付けができるようになったり、勉強に集中し易くなるメリットがあると言われています。薬には必ず副作用もありますので、医師とよく相談して下さい。

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青木
物忘れ防止に関連する記事です。よろしければご参照ください。

まとめ

ADHDの特性に多くみられる物忘れへの対処を子供の時から行うことで、物忘れに捉われ悩みすぎず、その子の個性を良い方に伸ばしながら成長できると言えます。

子供さんやご家族が一人抱え込まない為にも、この記事をお役立て頂ければ幸いに思います。