皆さんこんにちは!本日も発達障害等に関する学びや情報交換の場になることを願って投稿させて頂きます。
今日のトピックは「発達障害のメモの取り方」についてです。
発達障害を抱える人は、メモの取り方があまり得意ではなく、活用できていない様子が見られませんか?
今回は、発展障害を抱える人たちに向けて、効果的なメモの取り方をお伝えします。
後で見たら、意味が分からないこともありますね。
そんな方法を知りたいですね。
目次
発達障害の人におすすめな「メモの取り方」
前章まで、発達障害を抱えた人が「メモを残す」行為に大きなハードルがあるのだと判明しました。
飛び越えるハードルを小さくするために、発達障害を抱える人が効果的にメモを取れる方法を確認していきましょう。
他人に説明するつもりで書く
自分だけで使うメモであっても、後になって見返してみたら詳細を忘れてしまい、自分でも何を書いたのか分からなくなることがあります。
後で見返しても意味が分かるように、はじめから人に説明するつもりでメモを取りましょう。
きれいな文章で書こうとしない
「人に説明するつもりで」とお話しましたが、きれいな文章にまとめる必要はありません。
健常者であっても発達障害を抱える人であっても、文章をきちんと書くにはコツも時間も必要です。
しかし文章をきちんと書くコツも時間もないのが常なので「省略すること」を心がけましょう。
要点だけ抑えれば、「は」「の」なのど助詞は省略しても構わないので、第三者が見ても分かる範囲で、省略すると他人に伝わりやすくなります。
【一例】
遠足は、おやつ300円分まで持って行って良い。 ……要点を絞っていない場合
遠足 おやつ ~300円 ……要点を絞っている場合
特に発達障害を抱える人たちは、あれもこれもと盛り込んで多方面から情報を集めるよりも、一点集中しましょう。
結果的に作業が進み、いつの間にか宿題ややるべきことは終わります。
発達障害の方が一点集中した方がいい理由については、マルチタスクが苦手な理由の記事に詳細が書かれています。
興味のある方は是非一読いただければ幸いです。
5W1Hを意識して書く
5W1Hとは、以下の6つを指し示す言葉です。
- Who(だれが)
- When(いつ)
- Where(どこで)
- What(何を)
- Why(なぜ)
- How(どのように)
メモを取る際は、6つ全てを書く必要はないものの、必要な情報が抜けないよう5w6Hを意識します。
発達障害を抱えた人にとって、「意識しておく」といったあいまいな行為は、理解しがたいものであり、発達障害の特性の一つなのです。
「伝言メモ」項目で後述しますが、あらかじめ書式を決めて枠を決めておくと、書きもらし防止になります。
期限を書く
いつまでにやるべきことか、期限も書きましょう。
ADHDは先延ばしにしやすい傾向があるので、「リマインダー」ともセットで期限を管理することも試してみましょう。
こちらの「リマインくん」は、LINEの友達追加をすることで利用できます。
「何を、いつ知らせてほしいか」伝えておくと、その日時に知らせてくれます。
友達からメッセージが届くように、気軽に使える点がいいですね。
無理に漢字や横文字を使わない
漢字を正確に書いたり、慣れない横文字(カタカナの外来語)を使ったりして、無理をすると時間がかかってしまいます。
無理をしてしまうと、大事なことを聞きもらしたり、メモが追いつかなくなる事態になるかもしれません。
負のスパイラルに入らぬよう、平仮名で書いたり、図やイラストも利用するなど、自分が書きやすい方法を選択しましょう。
「後で読み返した時に、自分が理解できる」という目的が達成できたら、正確に書くことに拘らなくても大丈夫です。
メモするノートは一冊に決め持ち歩く
あちこちにメモをして、どこにメモをしたか分からなくなることがあります。
特に紙の切れ端などに書いたら、紛失したり捨ててしまい、2度と見返すことはないかもしれません。
メモするノートは1冊に決め、普段から持ち歩きましょう。
持ち歩ける小さめのノートとペンは、セットで持ち歩くと面倒になりません。
色ペンは使っても数色
色にこだわりすぎると、メモが追いつかなくなります。
「赤は緊急」「青は学校関係のこと」など、自分でルールを決めておきましょう。
「文字は黒で書いて、後から色ペンで印を付ける」など、あまりペンを持ち変えない方が効率的です。
「重要なことろは★印を付ける」など、色ペンを使わない方法もオススメです。
伝言メモの場合は書式を決めておく
本当に役立つ伝言メモを書くことは、発達障害にとって大変難しい行為です。
「伝言メモを受け取る相手」が知りたい情報を推測し、それを相手から聞き出しながらメモをする必要があるためです。
「推測すること」「必要な項目をもれなく記入すること」は、発達障害にとって難しいことです。
解決策はあらかじめ伝言メモの書式を決めておきましょう。
ASDはルールを明確にすると作業しやすくなります。
ADHDの場合も、どこに何を書けば良いか枠組みがあった方が、情報があちこちに散らばらず、まとまりのあるメモが書けます。
伝言メモは、インターネット上で無料配布されているのでお気に入りのメモを探してみるのもいいでしょう。
伝言メモ無料配布ページ | 富士フイルム
※パソコンでダウンロードしてください。使用する際は別途解凍ソフトが必要です。
おすすめ書籍のご案内
「大人の発達障害のための段取りノート術 見るだけでわかる!」では、ノートや手帳の使い方の実例が書かれています。
「コピーして使えるメモフォーマット集」では、「会議用、手帳用」など、いろいろなメモの書式が紹介されているので、実践しやすい点が嬉しいですね。
「紙にメモする」以外の方法を選択する
「聞く・書く・読む」どれか一つでも支障があると、メモが書けなかったり、書いてあるメモを活用できないことがあります。
通常、「メモを取る」と言うと、ノートなどの紙に文字を書くことを連想しますが、違う方法も考えてみましょう。
ボイスメモや音声入力を利用する
最近のスマートフォンは、はじめから「ボイスメモ」アプリが入っていることが多いようです。
また、通常の文字を打ち込む画面においても「音声入力」を利用できます。
Siriなどで「メモして」「録音して」などと話しかけるだけで、アプリを起動することもでき、メールなどで共有することもできます。
今回ご紹介する「ボイスレコーダー」アプリでは、ボイスメモを残すことはもちろん、再生スピードの変更や他のアプリとの連携も可能です。
録音した音声は.wavデータとしてスマートフォンに保存され、共有可能。
再生速度を0.5〜2.0倍速に変更できるので、聞き逃しを防ぐ良いツールですね。
パソコンやスマートフォンでメモを取る
紙に文字を書くことが苦手でも、パソコンやスマートフォンで文字を入力することが可能な場合もあります。
通常、人の話を聞く時にスマートフォンなどの画面を見ているとあまり良い印象は持たれないため、周囲の人に説明する必要があります。
学校や職場など長い期間関わるグループにおいては、少なからずカミングアウトすることになります。
「その場で一度だけ関わる人」など、状況によっては必ずしもカミングアウトする必要が無い場合もあります。
状況によっては「ペーパーレスで、できるだけアプリにメモしている」「アプリでタスク管理している」「書くよりパソコンに打ち込む方が得意なので」など、決まり文句を利用しましょう。
周囲の人ができること
周りの人が少し配慮するだけで、発達障害の苦手が軽減され、「強み」が活かされることもあります。
メモの取り方に関することで、周囲ができる対策をお話します。
合理的配慮
教育の現場では「合理的配慮」という考え方が導入されています。
障害の有無に関わらず、平等に人権を享受し行使できるよう、各々の場面で生じる障害をを取り除くため、個別の調整や変更をすること。
例えば通常の学校授業では、「板書や連絡事項も自分でノート等に書く」行為が当たり前になっています。
「聞くこと・書くこと」などが困難な場合は大きなハンデ(不利)になってしまいます。
また、ざわついた中では選択的に話を聞くことが難しい場合もあります。
以下のように、周囲ができる協力も考えてみましょう。
合理的配慮例1:「聞く」「書く」ことが苦手な場合
自主的な「聞く」「書く」行為をアテにせず、苦手な人にも伝わるように意識を向けましょう。
たとえば要点をまとめたプリントを別途用意すると、問題を回避できる可能性が高くなります。
合理的配慮例2:「書く」ことが苦手な場合
「書く」行為が苦手な場合は「書く」行為にこだわらず、別の方法を試してみましょう。
例えば「パソコン入力」「写真撮影」「会話を録音」などが挙げられます。
合理的配慮例3:要件は絞って伝える
あいまいな表現や量が多いと伝わりません。
「要点を絞って短く伝える」「伝言メモのように一定項目のみ書けるメモを使う」など、相手へ正確に情報を伝えるにはどうしたらいいのか、工夫をします。
合理的配慮例4:作業しやすい環境を整える
集中力を遮る音や光を極力減らすため、周囲の方に協力を要請するのも一つの手です。
例えば、「作業を遮る環境から離れた席へ移動する」「遮光カーテンなど室内空間を変更する」などが挙げられます。
発達障害の人が「メモの取り方」を不得意とする理由
発達障害を抱える人たちが、上手くメモを活用できない共通の原因の一つとして、メモの取り方に問題があると言えます。
メモは後で内容を確認できるように残すから役に立つものです。
ですが発達障害を抱える人たちは、メモを取ったとしても、後で役に立つよう書き残すことが困難になりやすいのです。
発達障害を抱える人たち特有のメモの取り方や困り事、原因を障害別にまとめました。
ASD(自閉スペクトラム症)の場合
ASD(自閉スペクトラム症) の人たちは 「何を書き残すべきか」「何が大事か」「メモを取るタイミングはいつか」と悩みやすいです。
【ASD(自閉スペクトラム症)の特徴】
- こだわりが強い。
- 先の見通しが立たないと不安。
- 曖昧な表現では理解できない。
- 人の目を見て会話しない。コミュニケーションが不得意。
要点を絞れない
ASD(自閉スペクトラム症) の人たちは、話が長くなると、上手くメモを取れなくなります。
「長い話の中から要点を絞ってメモをする」という行為が苦手なのです。
言葉の表面的な意味しか受け取れない
ASD(自閉スペクトラム症) の人たちは、コミュニケーションが不得意で、人の話の裏にある真意を読み取ることが苦手です。
せっかく発言したコメントをメモに残したとしても、真意がわからないため後にトラブルへ発展してしまう可能性も出てきます。
例を挙げると、伝言メモを取る時には「メモを受け取る人が必要とする情報」を、その場で聞き出す必要がありますね?
しかし ASD(自閉スペクトラム症) の人たちは、必要とする情報が分からないため「聞くべきことも聞かず、伝言メモの役割を果たせない」事態になるかもしれません。
せっかく発言したコメントをメモに残したとしても、真意がわからないため後にトラブルへ発展してしまう可能性も出てきます。
【(例) 課長の外回り中に、田中さんから電話があった場合】
「田中さんから課長に電話がありました。」 ……必要な情報が不足している
「田中さんから課長に○○の件で電話あり。急ぎではないので、17時ごろ掛け直すとのこと。」 ……必要な情報が足りている
メモを取るべきか状況判断できない
場の流れを読むことが苦手なので、「重要なことなのか、メモを取るべきことなのか」など、状況判断できない場合があります。
ADHDの場合
ADHDの人たちは「書いたメモの存在を忘れる」「まとまりのないメモを作る」「後で見返しても意味が分からないメモを作る」傾向にあります。
【ADHDの特性】
- 集中力に波がある。
- 衝動的に行動してしまうことがある。
- 注意が逸れやすい。
- 整理整頓が苦手。
メモをしても、どこに書いたか忘れてしまう
ADHDの人たちは、整理整頓が苦手で、忘れ物や紛失も多いことがあります。
また、紙の切れ端などにメモを書いてしまうと、なかなか見つからなくなります。
興味やアイデアが次々と移り変わり、メモが追いつかない
興味や関心が移りやすく、アイデアも次々と浮かぶことがあります。
せっかく1つに内容を絞ってをメモを残してしても、メモをしながら次の思考が浮かんでくるので、メモが追いつかず、まとまりのない文章になってしまうのです。
後でメモを見ると、意味が分からない
上記のように、次々と思考が移り変わるので、後で見返してみると内容が分からないことがあります。
LD(学習障害)の場合
LD(学習障害)の人たちは「メモを取るのが困難」「メモをうまく活用できない」傾向にあります。
【LD(学習障害)の特性】
- 「読む・聞く・書く・計算する」など、特定の分野の学習が困難。
メモを取る段階で躓く
通常メモを取る場面では「人の話を聞きながらメモを取る」という状況が多いですよね?
「聞く・読む・書く」の行為が困難ですと、ペンで紙に文字を書くという健常者であれば一般的な「メモの取り方」ができない可能性が出てきます。
メモを活用する段階で躓く
「読む行為」が困難だとメモを上手く活用することができず、例え伝言メモを残したとしても効果が発揮できない場合があります。
感覚に問題がある場合
発達障害を抱えている人の中には、感覚の受け取り方も特徴が出る場合があります。
【感覚統合の一例】
- 喫茶店などざわついた環境の中でも、会話をしている相手の話を選択的に集中して受け取れる聴覚における感覚統合
- 「明るさ」に順応してあまり眩しく感じずに「見る」ことができるという視覚における感覚統合
五感(味覚・嗅覚・視覚・聴覚・触覚)に加え、固有感覚(身体に対する意識の知覚)・前庭感覚(身体の傾きやスピード、回転の知覚)を含めた7つの感覚を環境に合わせて受け取る調整ができる能力。
通常は発達とともに統合され、無意識に環境へ適応できるようになる。
聴覚や視覚における感覚統合ができない人は、音や光などの刺激に順応できず、「視覚過敏」「聴覚過敏」など、通常の刺激でも強く不快に感じてしまう場合があります。
感覚統合についてさらに知りたい方は、発達障害児専門の理学療法士にしむらたけしさんによる動画をご覧ください。
「聞く」「見る」の段階で躓く
感覚統合に問題があり、「人の話を選択的に集中して聞く」ということが難しい場合、周りの雑音などが邪魔になり、相手の話を充分に聞き取れません。
また視覚過敏や聴覚過敏などがあっても、「聞く」「見る」の段階でつまづく可能性があるのです。
メモを活用する段階の問題
今回は「メモを取る段階」に絞ってお話しますが、「メモを活用する段階」についても少しだけ触れておきます。
「メモを取ったが、何から手を付けて良いか分からない」事態に陥ってしまわないよう、メモを活用する際は、きちんと優先順序を付けることが大切です。
優先順位の付け方については、当ブログ内記事「優先順位がつけられない発達障害「ADHD」の特徴と解決する6つの方法」でお伝えしています。
まとめ
今回は発達障害のメモの取り方についてお話しました。
発達障害はメモを取ったり活用することが苦手な傾向にあります。
解決策は「メモが書きやすくなるようメモ帳に一定の書式を当てはめる」「断りを入れ上で会話を録音する」など。
以上のように少し工夫するだけで格段にメモを上手く取れる可能性が高くなるのです。
メモを活用することで、「忘れ物が多い」など発達障害の様々な困り事を軽減できるかもしれません。
周囲の理解も得ながら、特性に合ったメモの取り方を試してみましょう。
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